「松岡茉優無双」勝手にふるえてろ kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
松岡茉優無双
よくある思春期の成長物語だな、との印象を持ちましたが本作はかなりスペシャルな作品。その理由は主演・松岡茉優という一言につきます。
松岡茉優は名作「桐島、部活やめるってよ」のカースト上位のムカつく女子役で認識したのですが、その時から達者な印象を持っていました。今回はまさに満を持しての主役。みなさんのレビューも松岡茉優絶賛の嵐であり、期待度Maxで挑みましたが、期待通り。ホント最高でした。ズバ抜けた達者さと元々持っている可愛らしさが相乗効果を生み出しているように思います。早口の自己紹介シーンとか、ミュージカルとか、部屋で謎曲聴きながら家事する姿とか、面白可愛くて素晴らしいです。コメディエンヌとしての天賦の才も100パーセント発揮しており、ギャグのキレも鋭く、まさに松岡茉優無双、って感じです。前半は爆笑の連続でした。
また、ニ役の渡辺大知も好演してました。個性派の俳優として今後もイケそうな雰囲気。主題歌もなかなか良かったです。
松岡茉優演じるヨシカは大人ですがまだ精神的には思春期です。彼女の世界には他者がいません。名前で呼ぶ対象が同僚のクルミくらいしかいない。絶滅種に自分を重ねるくらい自尊心も低く、中〜高校と周囲から承認されてこなかったことが伝わります。この時期に承認されないと長く引きずりますから。
そんなヨシカにアタックするのが、やっぱり他者がいなそうな厨二感満載のニ。クルミが「はじめての相手ならニがいいよ」とアドバイスしてましたが、レベルが同じなので釣り合いがとれてます。しかもニは少しずつヨシカの世界を想像できるようになっていくので、クルミのアドバイスはドンピシャだな、と感じました。
ヨシカの世界が変わるのは、イチとの再会後。現実のイチとは共通点もあり、実感を伴ってつながれそうだったのに、案の定そのチャンスをモノにできないヨシカ。こんな風に現実を突きつけられないと人って変わんねぇなーと実感したシーンです。
(この直後のミュージカルシーンが泣ける!)
痛いシーンですが、ヨシカは若く未来を感じさせるため、辛いけど、イイ!みたいな印象です。大変だけど深刻ではないというか。
しかし、本当にダメージを受けるのはその後の展開で、こっちは本当に気の毒というか、かわいそうでした。絶対に触れてほしくないポイントに触れられること。もしかしたらヨシカが世界と交流しなかった理由は、このようなデリカシーのない世界に侵入されることを恐れていたからかも、なんて想像もしてみました。
そこからどう復活するか、が描かれていく訳ですが、エンディングよりも終盤のヨシカの傷つきが印象深いです。
もしかしたら、原作の綿矢りさはこれを書きたかったのかも、なんて考えています。