「歴代最高のハイジ」ハイジ アルプスの物語 REXさんの映画レビュー(感想・評価)
歴代最高のハイジ
ハイジがハイジそのまま!といっても日本のアニメのハイジではなく、刊行当時の挿絵(ジェシー・ウィルコックス・スミス画)のハイジにそっくり。
今までハイジの映画化あまたあれど、天真爛漫さと可愛らしさはぴか一!
どれもこれもアニメで見たあの場面そのままだ!と感動さえ覚えてしまう。
展開がわかっているせいか、映画はあっという間に過ぎてしまう。もっともっとこの風景に抱かれていたい…と見終わった後に寂しさが。
アルムおんじ役のブルーノ・ガンツが薪割りなどの役作りをしたということもあってか、とてもいい味をだしているが、登場の尺が長くないので勿体なさも。おんじがなぜ「人殺し」と呼ばれているのかなど、彼の過去を掘り下げる場面は割愛されてしまった。
映画の中心は山(ハイジ)と都会(クララ)の対比だからしょうがないのかな。
字幕がアニメのハイジに合わせて「おんじ」などとしているのが懐かしさを誘います。ロッテンマイヤーさんもクララもペーターもアニメに親しんだ世代にとってはイメージ通りで、全く違和感なく受け入れられます。
私も登山をするので、五感がフルに開放されるあの感動、クララが立つ原動力になった理由がわかります。
彼女は精神的に立てなくなっていただけなので、抑制された生活で失われた生きる喜びが、自然に触発されたんでしょうね。
でもあの干し草布団には寝れないだろうなぁ。ノミやダニに刺されそうだから(笑)
原作は宗教の説教臭さがありますが映画からは払拭されており、あくまで人の善意の力で世界は動いていきます。
ハイジもアルプスでのんびり暮らしているだけでなく、クララのおばあさまから「あなたはあなた、誰かの意見に流されず生きて」と背中を押され、作家という夢を決意します。苦しい時間も悲しい別れのも、すべての経験は無駄にならないよ、と教えてくれる不朽の名作です。