ワン・デイ 悲しみが消えるまでのレビュー・感想・評価
全3件を表示
思慮
韓国らしい作りだった。
幽体離脱してる陽気なヒロインと、コメディらしい導入であり、あまり悲壮感が表に出ないながらも、その裏で濁流が渦巻く葛藤を匂わせる構成だった。
ライトな感じで進んでいく展開も楽しくて、小石のようにシリアスな側面を挿入する脚本も結構好きだ。
最終的に全ての伏線は滞りなく回収され、主人公の過去も、ヒロインの境遇もちゃんと把握できる。脇の甘さを感じはするも、優れた脚本だと思われる。
ただ…
ラストがやっぱ…どうなのかな。
ヒロインの生命維持装置を停止させる主人公。実際、そおいう境遇に置かれている人達はどお感じるのだろうか?
病院を後にする主人公の顔には、どこか吹っ切れた感じがあり、救済をほのめかすような演出もある。物語のラストとしては、綺麗にまとまってる感はあるんだけど…俺には少し肩透かしに思えた。
ヒロインの要望に応えた主人公ではあって、妻が死んだ時の感情なんかにもリンクしてはいるわけなのだけども…そおなると、やっぱりお前は妻が死んだ時に少なからずはホッとしたんだな、と思う。
葬式に参列しなかったのも、妻の部屋に入れなかったのも、居なくなった事実を認めたくないからではなく、その罪悪感からだったのかと。
彼は許して欲しかったんだろうな。
思いがけず去来した安堵感を。
色々ひっくるめて全部を背負い込んだ主人公ながらも、そんなクソ重たいテーマ孕んだままのラストにしては軽すぎて…違和感が。
去っていく者と残される者…多くの場合は残される者の解釈に左右はされるのだけれど、こんなにあっさり描かれてもなあ、と。
1つ面白いと思えたのは、関係性だ。
会話さえ出来ればなんとかなるんだなと思えた。そこはなんかすんなり入ってきて…いわゆる幽霊に近しい存在のヒロインなのだけれど、会話さえ出来れば順応もしていけそうだ。
以前、なんかの本で「人は未知のモノに恐怖を感じる」って書いてあった。
悪魔や幽霊、死とか死後とか…明日なんかに恐怖を感じる人もいるだろう。
暗闇を本能的に怖いと思うのは、その向こうが見えないからなんだとか。
彼女とは会話を通して未知ではなくなったわけだ。相変わらず得体のしれない存在ではあるのだけれど、意思の疎通があるならば未知のレッテルは剥がれていき順応もする。
なんだか、妙なとこに凄く納得できた。
受け入れられないことが2つ
映画なのでファンタジーとしての設定は受け入れるし、なんでここでこの人が登場する?って多少強引な展開もまぁ否定しない。
でも、植物状態の女性のためにあれだけ奔走したのに、恋愛的な展開にならない。そりゃそうだ。妻をなくしたばかりなんだから。その設定がまず納得いかなかった。
そしてラスト。自分では命をたつことができない女性の代わりに生命維持装置?を切るという殺人行為が行われた。亡くなった妻が目の前に現れて、キレイなままで死んでいきたいからという言葉に感化されての行動のようだが全く納得がいかなかった。
そう考えると、結局何の話だったんだ?話の芯となる部分をはっきりさせてほしかった。
なんであのラスト…。
俳優キムチナムギルさんの大ファンです。主演映画の公開初日に鑑賞して来ました。
ヨレヨレのスーツを着たサラリーマンのナムギルさんも素敵です。突然現れたウヒさんとの魂の交流が丁寧に描かれて、映像も切なく美しいのです。黄昏ていく空、ノスタルジックな海辺の街と海岸。それはそれはきれいです。
しかし!!! あまりにもラストが残念です。
生きていくこと、死んでいくこと、見守っていくこと、全てが途中で絶たれてしまうのです。生きることの終わりにある死を受け入れられず、途中で放り出してしまった。生きていく国が違うと死生感も異なるのでしょうか。死んでいくことを美しさというオブラートで包んだだけの映画になってしまいました。
良いシーンがいっぱいあっただけに理解できない結末。あのラストでなければ心を癒す佳作になったかもしれないのに本当に残念です。
全3件を表示