めがみさまのレビュー・感想・評価
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~「・・・で、あんたはどうしたいの?」~
【賛否両論チェック】
賛:前半は、孤独で追いつめられていたヒロインが、自分に正直に生きるセラピストとの出逢いを通して、少しずつ変わっていく様子に感動させられる。後半は一転して、次第に限界が見えてきたセラピーの考え方や、段々と崩れていくヒロイン達の関係性に、他人との関わり合いの中で生きる重要性を再認識させられる。
否:展開はかなり強引で、かつこじんまりと収まってしまった感が否めない。
自分の居場所がなく、精神的に追いつめられた理華が出逢った、不思議な魅力を持つセラピスト・ラブ。前半は、
「・・・で、あんたはどうしたいの?」
と、我慢をせずに自分の感じたままに生き、それを提唱するラブに、死ぬことを考えてやまなかった理華達が救われていく様子が、思わずグッとくるようなセリフ満載で描かれていきます。
しかしやがて、セラピーの考え方のままに行動する者達が、次第に暴走していく姿を通して、「社会の中で生きること」の難しさや大切さも、訴えかけているようです。そして無二の相棒だったはずの理華とラブの間にも、ほのかな亀裂が走っていく様も、また切なさが残ります。個人的には、「自分に正直に生きる」と「自分は我慢しない」をイコールで考えてしまったところが、ラブのセラピーの限界だったのかなと感じました。自分と正直に向き合った結果なら、「我慢したいから我慢する」っていう選択肢もあるはずですしね。
思わず感動させられつつも、自分自身が他人との関わりの中で生きていることを改めて痛感させられるような、そんな不思議な作品に仕上がっています。
それにしても新川優愛さん、目力がハンパないですね(笑)。
もっと深めて欲しかった
人間の心のコアな部分に焦点を当てた物語だったので、前半はかなり面白く観ていました。が、後半はストーリーがとっちらかって失速してしまったなぁ、という印象を持ちました。
本作品は赤ちゃんが象徴的に用いられています。これは、ラブの行動原理は人生の最初期から大切にされなかったことへの怒り・復讐であることを示唆しているように思われ、それ故に哀しみも感じました。ラブは満たされない赤ちゃんとして生きているんだなぁ、と伝わってきます。
怒りの発露を解放と勘違いし、それ故徐々に破滅に向かって行く様も実にゾクゾクしました。
理華の家庭の地獄感もすげえリアルに迫ってくるし(母親の床ドンはヤバい!)、キャラ造形やテーマは素晴らしかったと思います。特に、理華の救われなさは本当に観ていて胸が詰まりました。
それ故、後半の雑さが惜しいです。
理華がラブの正体を暴くセリフも、理華の成長によるものではなく、追い詰められてのカウンターパンチみたいで、説得力に欠けるように思えてしまった。
ラブ=理華というファンタジーなオチは出会いの辺りから割とバレバレで、途中までは納得できていたのですが、ひとつになっていくプロセスに違和感があり、腑に落ちなかったです。
自らの影が統合されていくプロセスは、成熟により進んでゆくため、ポジティブなイメージを伴います。
しかし、ラブと理華の統合には、成長・成熟はありませんでした。おそらく、ラブ=理華の成長には、赤ちゃんとして安心して生きていい、生まれてくれてwelcome 的な抱えられ体験のようなものが必要と思われますが、物語にはそれが出てきませんでした。
(それがイケるポジションに川崎というキャラがいたのだが、残念ながら書割りで終わってしまった)
主体である理華の成長が描かれていないため、2人が2人のまま破滅するか、影であるラブに理華が取り込まれるのであれば自然だと思います。しかし、オチはラブが理華に統合されてしまうため、不自然さは拭えません。
統合されたあとも、いつものしょんぼりした理華が変わらずいるだけ。クライマックスはモヤモヤしただけで何も残りませんでした。
三坂の物語なども尻切れな印象を拭えず、盛りだくさんにしようとしたため物語が拡散し、深まらなかったように思えます。
意欲的なテーマに挑んだ作品だったので、本当に惜しいし残念極まりない、というのが感想です。
人格障害サスペンスの定石。松井玲奈の実力を楽しめる小品
松井玲奈という女優の実力を楽しめる、ちょっとしたお得感のある小品である。
彼女のプロフィールに"元SKE48"というバッジがついてまわるのは、主演映画の成立要件ではある。しかし、こうして"女優"としてのセンスが磨かれてくると、"アイドル偏見"は障壁にしかならない。
"理華"(松井玲奈)は、職場でのいじめや母親の干渉に悩み、精神安定剤に依存する、コミュニケーション弱者。そんな彼女が出会ったのは、"ラブ"(新川優愛)と名乗る自己啓発セラピスト。あっという間に、"ラブ"のとりこになる。
そして、"自らの思いのままに行動し、発言し、我慢をせずに生きていく"、というラブの主張に傾倒していくうちに、常軌を逸した状況に陥っていく。行き着いた先に待ち受ける、どんでん返しのあるストーリーだ。人格障害サスペンスの定石を使った、プチ「シャッターアイランド」(2010)。
作品として、予算・時間のなさが演出の幅を狭めているのは仕方ないとして、定石としては悲劇的なオチにしないと中途半端になる。どうせ不条理な展開なのだから、最後で丸められても救われない。
松井玲奈は、地味で内向きな女の子をさらりと演じているが、前作の「笑う招き猫」(2017)での、"オンナ漫才師"役とは正反対だ。
誤解を恐れずにいれば、"その他大勢アイドル"の中で育てられた松井玲奈に銀幕主演の華はない。主演ができないという意味ではなく、彼女自身がこうして実力を提示していけば、あとは、いい監督、いい作品に出逢える運だけである。
(2017/6/13/シネマート新宿/ビスタ)
観るたび新しい発見がある
試写会と公開初日に一度ずつ鑑賞しました。
初見時は苦手なテーマかもしれないと思いながら観ていましたが、主演の松井さん、新川さんや、廣瀬さんをはじめ脇を固める俳優陣の皆さんの演技に引き込まれ、結局公開初日にも足を運びました。
物語のあちらこちらに違和感を残しつつ話が進み、最後で真実(らしきもの)が一旦明らかになります。
ただ、そこで全ての疑問がすっきりと解決するわけではなく、明確に答えが提示されないままの部分があったり、結末がわかったことでまた別の伏線、別の疑問に気付いたりと、広がりのある作品になっていると思います。
観るたび新しい発見があるはずです。
ぜひ何度も観たい、観てほしい作品です。
DVD化(できればBlu-rayも)、心待ちにしております!
内容を語りたい
もっと素直に生きようと
アンビバレンツを見事に描いた秀作
人は自我の塊の赤ん坊として産まれ社会性をもとめられ自我を殺して生きてゆく。誰しも、そのバランスをどうとるかに悩み苦しむ訳だが、この映画は二人の対象的な女性の生きざまを通じて、その葛藤を観るものに考えさせる。ラストシーンはラブの存分そのものが、アンビバレンツな心が産み出したアイドルだったのだと観客に気付かせる。してやられた感は、強烈だった。主演女優二人も監督も若い。今後の作品も楽しみ。
心が痛くなる映画
理華の気持ちがわかりすぎて、当てられた感がある。病んでたりつらかったりしんどい人が見たら、たぶん持ってかれる。
観る人によって感じ方が違うって舞台挨拶でも言ってたけど、本当そうだと思う。響く人とふーんって人がいそう。
物語自体はサスペンスな作りになってて、仕掛けとどんでんに最後驚かされる。とりあえず1度だけだと咀嚼しきれないので、また観に行きたい。観るたびに印象変わりそう。
とにかく玲奈ちゃんすごかった。アイドルの片鱗全然ない。玲奈ちゃんファンじゃなくてもアイドル女優嫌いでも、これは観る価値ある。
優愛ちゃんも、今までとはちがう振り切った演技で新しい感じ。
個人的に記者役の人好きだったかも。
すごく考えさせられる、良い映画でした。
原作あるのかな?あったら読んでみたい。
表裏
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