ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリーのレビュー・感想・評価
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名シーンの裏に名職人あり
夫のハロルドは若くしてヨーロッパ戦線の爆撃機乗り、退役後にハリウッドの背景画職人になったのを皮切りに絵コンテ職人、美術プロデューサーとして様々な映画で活躍した。妻リリアンは考証のスペシャリストとして資料館を運営、映画人から私的な相談までされるハリウッドの母的存在。そんな映画界のスペシャリストカップルの半生を関係者のインタビューや資料を交えながらドキュメンタリー形式で綴ってゆく。
脚本は必須だが絵コンテは表現手法の最初の視覚化であり簡単なイメージしか使わない監督もいれば黒澤明のようにディテールまで拘って自身で描く監督もいる。演出プランや美術セットを作る上でも具体的なたたき台があれば効率が良いことは間違いないから製作会社にもメリットは大きい。ハロルドの場合は脚本や監督の意図をくみ取りながらも一歩踏み込んだ映像効果を提示する才能故に使いこなせるのは名だたる巨匠に限られたのだろう。妻のリリアンはユダヤ人の孤児という生い立ちからも芯の強さと並外れた努力家であったことが伺われるがハロルドがリサーチの重要さや狙いを的確に教えたことが成功の礎だろう。
ややもすれば退屈になりがちなドキュメンタリー映画だがお二人の仕事ぶりが具体的な作品を例に紹介されるので興味深い、ひもじい新婚生活、末息子の障害や夫の事故など苦労を抱えても堅実に実績を積み上げてゆく夫婦の絆の素晴らしさも伝わってくる良い作品でした。
羨ましい
こうした夫婦にスポットを当てて
映画まで作れる大国が羨ましい。
基本は映画に生きた夫婦の愛と絆のドキュメントだが、
スタジオの憩いの場であるリサーチ部屋を、成功した監督たちが守っていったり、
彼ら夫婦を語れる映画美術史の研究家がいたり。とにかく彼の地の映画業界の厚みを感じた。業界を引退した人のためのホスピスがあるのも知らなかった。
翻って日本では監督ですら日陰の存在。
(サイタマノラッパーのあの監督の言葉が忘れられない)
映像制作に携わる人間を守り、
文化を育てていく土壌をもっと作ってあげて欲しい。
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