「肌の色で魂まで蹂躙される恐怖」ゲット・アウト ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
肌の色で魂まで蹂躙される恐怖
とにかくメタファーが印象に残った映画だった。
冒頭、白い車は白人の象徴で白人が黒人を狩る映画であることが示される。
主人公は狙いを定められ、恐らくカメラが仕込まれたライオンのぬいぐるみ(肉食動物)で見張られる。
序盤で車に轢かれたトナカイ=草食動物=主人公(黒人)の象徴でその主人公がトナカイの頭で彼女の父=捕食者を殺す。(被捕食者による捕食者への攻撃)
この映画で主人公は黒人として失礼な差別をしてくる白人の警察官には諦めて対応している。
しかし本当に怖いのは黒人を認めてくれる白人だった。彼らは黒人が持つ遺伝子的肉体の強さを欲している。ここで差別をしてくる警察官も黒人を認めてくれる白人もどちらも肌の色でしか主人公を見ていない。主人公の魂は誰も考えてくれないのだ。
チャットだけで主人公と会話したとき、失礼な態度の白人も黒人を認めてくれる白人も、対面した時と同じように主人公に接するだろうか。
この映画で黒人は肉体を白人に奪われ、魂は心の監獄の様なところに押し込められる。
肌の色だけで魂まで蹂躙されそうになる。だって黒人だから、それだけの理由で。
黒人だから魂を蔑ろにしても良いと思ってるんじゃないか?、これを問うてきているように感じた。
だから彼女の弟が主人公の遺伝子的強さを指摘して格闘技を勧めてきたが、クライマックスで彼女の弟と揉み合いになった時、主人公は遺伝子的肉体の強さでは無く、罠を張って知恵で倒す。
彼の魂が勝ったのだ。
そしてあれだけ黒人という理由で差別してくる相手に毅然とした態度を見せろと言っていた白人の彼女が、ラスト、主人公が黒人ということを利用して助かろうとする。
黒人が白人に抱いている感情を垣間見たシーンだった。
ちょっと疑問だったのは、セリにアジア系の男性が居たこと。黒人にとっては白人も黄色人種も差別してくる相手なのかな。
そして!あの友達、最高だった!最初の印象から魅力的に変化する。魅力的のある人物によって映画は面白くなる好例だと思った。