劇場公開日 2017年9月22日

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「集団的下手クソ演技発動!」あさひなぐ 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5集団的下手クソ演技発動!

2017年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

乃木坂46というと苦い想い出がある。
興味本位から2015年にTV東京で放映されていた『初森ベマーズ』を観たことだ。
ほぼ登場人物は乃木坂一色、やはり本作でも主役を務めた西野七瀬が主演で、最大のライバル役が白石麻衣であった。
内容も酷かったが、まあ、全員の演技が観られたものじゃあなかった。(一応最後まで通して観た)
AKB48よりも平均的に見た目は全員かわいいと思ったのだが、ただそれだけを確認して終了した。
もちろんファンになることはなかった。

福田雄一の監督作品『宇宙の仕事』(全10話)にも西野は出演していたので出演する回は目にしていたが、どこにでもいそうで実はいなさそうなちょい美人なところが受けているのかな?という印象である。
福田は下手な俳優や女優の演技に全く期待せずむしろその下手さを活かす演出なので、もちろん西野の演技で目を見張るところは全くなかった。

さて本作、乃木坂の演技には期待0だったが、薙刀のスポ根ものというコンセプトが面白そうだったので観ることにした。
期待値が薄かった分想像以上に面白かったとは言えるが、映画全体として観るならどうかと言われればやはり低いランクに位置するかもしれない。
乃木坂以外の配役に個性派の役者を並べたのでなんとか持ったという印象である。

前述した役者の演技が下手クソでも面白くする福田の演出というのは、わざと役者に大袈裟な演技をさせて笑いを誘う方法と、実際にその場で役者を素で笑わせてしまう方法の2つだと思っている。
特にそれが活かされた映画が『女子ーズ』だと思う。
桐谷美玲、藤井美菜、高畑充希、有村架純、山本美月の主要キャスト5人のうち演技の上手いのは高畑ぐらいである。実際に高畑はこの中では一番難しいキャラクターを演じている。
大袈裟な演技は下手な役者の方がむしろ上手かったりするので4人にはうまくはまっていたと思う。
また『勇者ヨシヒコ』シリーズでも多用される演出方法だが、この映画では佐藤二朗が素で5人を笑わせるほぼアドリブ演技をかます。これが功を奏している。
福田作品ではこの重要な役どころは佐藤やムロツヨシが請け負うことが多い。
ある意味演技が下手な役者をコケにした演出方法だが、見事であるとしか言いようがない。

さて本作でも乃木坂というまるごと下手クソな集団を抱え込んでいるようなものなので、福田演出を取り入れたのかと思うところがあった。
『アオイホノオ』『スーパーサラリーマン左江内氏』などの福田作品に出演して福田イズムを理解している中村倫也が出演して敢えてアホな演技をしているところである。
中村のアホなアドリブ演技が乃木坂メンバーの集団的下手クソ演技の下手さ加減を相対的に中和しているように感じたので、おっ、やるなあ〜この監督!原作で先生がもう少し年配なら佐藤二朗を使ったのかな?と思っていたのだが、どうも監督のインタビューを読むと中村がなかば勝手にやっていたようでむしろやり過ぎないように手綱を引っ張っていたらしい。
乃木坂の中では生田絵梨花が一番演技がうまく、伊藤万里華がなんとか及第点だったように感じたが、他は『初森ベアーズ』からあまり進歩していない。
そのため西野と白石だけのシーンなど観ているこちらが顔を覆いたくなるほど場が持たない。
メンバーに薙刀のイロハを教える僧侶・寿慶役の江口のりこは、カツラがもろにわかるほど超絶坊主姿が似合わないわ、集団的下手くそ演技が発動された乃木坂メンバーにからまなきゃいけないわでなんだか可哀想だった。
また『ちはやふる』のメンバー役から安易に横滑りで起用されたように見える森永悠希も彼女らの中に入ると相当浮く感じであった。
とはいえ江口や森永が1人アップで画面に映って何かを話すことでシーンを引き締める役割も担っていたので必要な配役ではあった。
他には二ツ坂高校薙刀部の中で唯一乃木坂メンバーではない富田望生は一番若い年齢ながらも無難に役をこなしていたように感じる。

それから1点、「旭は背が小さいから」と2回ぐらい西野が言われるシーンがあるが、どう見ても周りとそれほど変わらない。
西野役が採る薙刀の戦法にどうしても必要な要素になるが、キャストありきで配役したはいいが削ることもできずで大間抜けな発言になってしまっている。

本作では試合シーンも含めて薙刀を振るう際に乃木坂メンバーにほぼ代役を立てておらず西野は撮影で誤って打たれた膝が紫色に腫れ上がったこともあったらしい。
彼女たちからすれば相当頑張ったのだろうが、やはりアイドルであるので見た目に筋力が圧倒的に足りない。みな細すぎる。
スローを多用してうまく撮影・編集しているが、素人目に見てもどうしても全体的にスピードと技のキレが足りない。
ハリウッド映画にもさまざまな欠点はあるが、少なくともこういったところは絶対に手を抜かない。要求された動きができるように3ヶ月などじっくり時間をかけて訓練をして体をそれなりに仕上げてくる。
お遊戯と言ってしまえばあまりに失礼かもしれないが…やっぱりアイドルが袴コスプレをしているように見えてしまうんだよなぁ〜。

頑張ったことはわかる。
ただ頑張ったと言われているようでは結局基準を満たしていないのではないだろうか。

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曽羅密