「吉永小百合舞台挨拶にて鑑賞。」北の桜守 五社協定さんの映画レビュー(感想・評価)
吉永小百合舞台挨拶にて鑑賞。
一言で言えば『不思議な映画』と言える。
渾身の演技からか、感極まって何度か涙を流した、、それ故、感動した作品であるものの、
一方、ファンシーな展開を巧く飲み込めないのか多少疑問の残る“何とも言えない不思議な舞台劇”を見せられた感じがして、満点とすべきか、評価を下げれば良いか微妙な点ももある。
何より、滝田洋二郎監督作品は始めて劇場鑑賞するものの、画面構成に無理がなく、所々に私の過小評価する舞台劇を取り入れて、話を出来るだけコンパクトに纏めて、“作者の意図”で済ませず、鑑賞する者に全てを受け容れさせることに於いては綺麗な創りとも言える。
那須真知子の脚本も割と冴えた暖かみを感じる、ただクライマックスへの導入である、“2年後の北見”は幾ら何でも、主役のテツさん生きらてられないだろう…もう少し短いスパンと、なぜ北見の桜に辿り着いたかを説明して欲しかった。
昭和20年の樺太と、
昭和46年の北海道、
所々に昭和20-31年の網走が散りばめて、
それをきちんと丁寧に昭和46年の観点から整理し、一つ一つの流れを証明して稚内北岸での荒波でグッと引きつけて、人気の無いバス停を徘徊し、吹雪の中を歩くテツさんを見て涙が出ただけに、ラストへの持って行き方が個人的に残念。
『北の“桜守”』と言うからには桜で始まり、桜で終わらせたかったんだろうけど、テツさんの夢の中で咲かせても良かったのかもしれないけど、やはり現実に咲かせて月夜の桜で全てを語りたかったのかな。
先年亡くなった大鵬さんが樺太から引き揚げと少年時代の極貧生活に比べたら、相撲部屋なんて何の苦もなかった、
と仰ってましたが、本作拝見して、ソ連侵攻地域からの引き揚げされた方は戦後もだいぶ苦労された方が多かったようですね。
我が家も台湾から一家引き揚げした筋ですが、戦後は人並みの貧乏⇒世間同様の中産階級になったのが台湾組ですが、満州・樺太の方々は亡くなるまで苦労を背負っておられたと聞き及びます。
日本映画界最後の大スター・吉永小百合も壮年と言うか、老いの役柄を演じるようになり、端々の行動がその年代の親を持つ者としてはゾッとする側面もあり。
もし本作をご覧になるのであれば、HBC製作で時折CSで放送される『幻の町』、なかにし礼原作の作品『赤い月』の映画またはテレビドラマをご覧いただくと宜しいかもしれない。