火花のレビュー・感想・評価
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燻る火花から、打ち上がる笑いの花火となれ
原作は言わずと知れた芸人として初めて芥川賞を受賞した又吉直樹のベストセラー。
原作は未読。
おそらく素晴らしい小説なのだろうが、こういう芸人絡みの映画化などのメディア展開は便乗商法の匂いがぷんぷんして好きじゃない。
話題を振り撒いた割りにさほどヒットせず、それ見ろと。
しかし実際見てみたら、結構良かったんだな、これが。
若手漫才コンビ“スパークス”の徳永。
先輩漫才コンビ“あほんだら”の神谷。
笑いの世界に生きた二人の10年…。
もっと笑いを全面に出しているのかと思いきや、人情と切なさの、しみじみとした人間ドラマ。
貧乏暮らし。
小さな劇場でオーディション、ネタ披露。
厳しいダメ出し…。
相方への不満。
行き詰まり、どん詰まり。
限界…。
芸人の話としてはあるあるかもしれないが、売れない芸人の姿や世界をリアルに映し出す。
これもひとえに、原作・又吉、監督・板尾創路、作り手側に携わった二人の芸人の賜物だろう。
今や“一握り”の成功した二人だが、彼らだって経験したであろう“苦み”が、喜怒哀楽の感情たっぷりに描かれていた。
主演二人の魅力も大きい。
後輩・菅田将暉、先輩・桐谷健太。
元々の高い演技力に加え、バラエティー番組などに出ると芸人顔負けの個性とユーモアセンスの持ち主で、それらが抜群の相性を見せた。
昨年大活躍した菅田だが、本作は桐谷が儲け役。
型破りな笑いを追求する豪快な人柄で、面倒見がいい兄貴分。まるで素の桐谷を見ているよう。
時々イイ事も言う。
それでいて後半は、哀愁も…。
芸人の話でよくあるのはコンビ愛だが、本作の二人はコンビではなく、お互い相方が居て、あくまで後輩と先輩。
神谷に惚れ込み、弟子入りを志願する徳永。
そんな神谷も呑気に弟子を取れるほどベテランでもなく、売れてる訳じゃない。寧ろ、まだまだ未熟で、徳永と同じく全く売れてない。
でも人との出会いや縁って不思議なもので、この人に追いて行きたいと思う時がある。
別にそれは芸人と芸人としてではなく、人と人としての相性の良さだろう。
普段はボケ担当の徳永だが、神谷と一緒だと自然と自分がツッコミ側になってノレる。何でも話せる。打ち明けられる。励まされる。
それは神谷にとっても同じ。可愛い弟分。安心してボケられる。励まし、頼られてるようで、実は自分も励まされ、頼っている。
この人が居るから、コイツが居るから、俺は頑張れる。
しかし、お笑いの世界はシビアなもので…
まるで線香花火の如く、ほんのひと時芽が出ても、結局はブレイクの波に乗れないまま。
売れる、売れない。この差って、何なんだろう…?
持って生まれた才とか、強烈個性とか、時には運とか、色々ある。
スパークスもあほんだらも、決してつまらなくはない。スベった時もあるが、審査員に酷評されたあほんだらの録音漫才も個人的にシュールでウケた。
真摯に向き合ったお笑いへの姿勢は全身全霊だ。
それでも、売れない。
キャラだけでウケてるピン芸人の方が売れる。
笑いの追求、笑いの受け止め方は人それぞれ。
だからこそより一層、笑いとは何なのか、笑いについて考えさせる。
頑張っても、頑張っても、頑張っても…。
次第にキレが無くなっていくスパークス。
迷走する神谷。
二人の笑いの価値観にもズレが生じ始める。
見ていて痛ましい。
進むべき道も狭まってくる。
徳永の相方、山下のある台詞が響いた。「笑いには自信あるけど、この生活を続けていく自信が無い」
俺たちは、ここまでなのか…?
一体、何人居るのだろう、笑いの道から退いた若い芸人たちが。
各々、どんな思いでラストライブに挑んだのだろう。
スパークスも遂に引退を決意する。
そして迎えたラストライブ。
このラストライブは、芸人人生のトリを飾り、観客を大爆笑の渦に巻き込んだとはとても言い難い。
が、相方へ、お客さんへ、何より10年も情熱を捧げたお笑いへ満ち溢れ、“反対に”ぶちまけた思い。
漫才としては反応に困るが、ラストライブとしては胸に迫り、目頭熱くさせる。
引退し、堅実な仕事に就いた徳永はある日、久し振りに神谷と再会する。
神谷はまだお笑いの世界に居て、ドン引くくらい迷走していた。さすがにアレはね…(^^;
それでも神谷は、笑いの世界で生きていきたい。どんなにボロボロになっても。
それなのに、自分は…。
神谷はお笑いライブの飛び入り参加に徳永を誘う。
拒む徳永だが、この時の神谷の台詞に心鷲掴みにされた。
芸人として戦った、芸人として今も戦っている自分への誇り。
全ての芸人たち、お笑いの世界への感謝、エール。
笑いの世界は辛く、苦しく、厳しく、それ以上に楽しく、面白く、堪らなく、奥が深い。
何故笑いの世界で食っていきたい若手が後を絶たないのか、売れても笑いを追求し続けるのか、その理由がそこにある。
エンディングに沢山名前がクレジットされた無名の芸人たち。
この中で何組が“火花”から“花火”となるのか。
そこに流れる、徳永と神谷のカバーによるビートたけし作詞の『浅草キッド』が胸アツ。
星の数ほどの燻る火花たち。
いつしか、夜空に打ち上がる笑いの花火となれ。
又吉の小説が良いから監督や脚本や俳優がクソでもある程度は観れる。 ...
又吉の小説が良いから監督や脚本や俳優がクソでもある程度は観れる。
ただドラマ版のと比べるとまじで天と地。
何から何まで劣ってるし2時間で表現できる技量もないクソ芸人に監督やらせんな。
好きな俳優観たくて観るならいいと思うけど火花をちゃんと観たいならドラマ版の方を絶対に観るべき。
真剣に観たのに全然感動しなかったなんぞこれ。
面白いキリ口の師弟映画
原作未読。私が新宿の吉本劇場に初めて行った時には、語りがうまいし噛む事さえない面白い芸人がいっぱい居てビックリした記憶があります。
それでもその中でも一握りしか成功しない芸人の世界。(相方として出ていたが2丁拳銃なんかはその例だと思う。)
人気も運要素もありますが、それに費やす月日は半端ない。そこに人生を捧げ、それを考えさせてくれる映画。
ひっくり返る内容や大爆笑する映画ではないが、面白さを伝えたいという芸人のキリ口(方向性、演出)は色々な面で成立していたし、面白かったでしたよ。
ただ、中盤からの神谷(桐谷健太)の方向性がよく分からなかった。(徳永と同じ髪型、シリコンおっぱい作成)
芸人を観る側に立つ私としては、「人気者ならずとも色んな芸人を見ておきたいなぁ。」と思わせる映画でした。
原作未読だけど面白かった
もともと菅田将暉すげーな、っていうのはありました。映画で見るたびに印象が違うので。そんな中で、わりと「菅田将暉はこういう姿」のまま登場していたので、「ああ、菅田将暉や」と感じます。
桐谷健太はauのCMでしか知りませんでした。いい感じにおかしな人間になってるという印象です。一緒にいたらちょっと恥ずかしくなってしまうけど、存在として非常に興味深い感じの。
彼らが劇中で演じる漫才が面白いかおもしろくないかってのは、ちょっと放っておきます。彼らの漫才で笑わせるのが目的の作品じゃないだろうし。逆に、彼らの芸人としての苦労とか、天性とか、そういう才能持ってるから世間から浮いてしまう感じとかが伝わってきました。
「常識」がわかりながらわからないフリしてる人もいれば、「常識」に囚われてるのに自分はそうじゃないと勘違いする人もいるし、「常識」を知っているつもりでいるのに全く違うところで行動してしまう人もいる。真っ向から「常識」の中で生きようと決意する人もいる。そういう人たちの姿を、(オブラートには包んでいるかもしれないが)わりと素直に描き出している作品です。
いやでも自分の近くに神谷さんみたいな人いたら、受け入れられないだろうなああ。。。!
これが芸人の生き様。ラストを飾る“常識を覆す漫才”とは。
【賛否両論チェック】
賛:2人の芸人の孤高な魂が出逢い、次第にお互いに影響を与えていく姿に、芸の道に生きる者達の真髄を垣間見るよう。感動を呼ぶラストも秀逸。
否:基本的には芸人達の生き様が淡々と語られていくだけなので、見方によっては非常に退屈。笑いのネタも見る人を選びそう。
貧しいながらも自身の夢を叶えようと奮闘する徳永と、敢えて飄々と己の道を歩んでいく神谷。一見すると対照的で、しかしどこか同じ匂いのする2人が出逢い、お互いに変わっていく様がしっかりと描かれていくのが印象的です。
そして、圧巻なのはそのラスト。観る者の心を打つ“常識を覆す漫才”には、思わず感動させられてしまいます。
一方で、ストーリーそのものはかなり淡々と10年間をなぞっていく感じなので、興味を惹かれないと眠くなってしまうかも知れません。
それにしても木村文乃さんの変顔は、可愛すぎて反則ですね(笑)。良くも悪くも原作が話題となった作品なので、気になった方は是非。
太鼓の太鼓のお兄さん!!
芸人の楽しさと難しさが良く伝わってきました。会社員と異なるスキームで生きており、(映画のタイトル通りに良く言えば)自分自身をスパークさせ続けるので、常日頃からセックスや不祥事と隣り合わせで身内を庇うのも納得がいきますし、出てくる女性が何だか皆エロく見えてきます。桐谷メインの前半が特に面白く、後半は物足りませんでした。こんなに面白い人なのにネタはつまらなく、迷走してしまうのは残念です。荷物を取りに行く際の無駄口で吹き出しました。地方に越して、ワンチャン狙いで東京へ行くという価値観が理解できたので、丁度良いタイミングで鑑賞する事ができて良かったです。
芥川賞の基準て何?
笑いとは何なのか?
緊張感がない
切ない青春映画
芸人(ピース又吉)の原作で、芸人の監督(板尾創路)が撮った作品だからと、漫才芸人のわかりやすい「面白い話」を期待して観にいくと、肩透かしを食らう。
切ない青春映画に仕上がっていた。
夢見たが、「望んだとおりに行かなかった経験」を持ってるかが、この映画に感情移入できるか否かのポイントに思った。
芸人の世界だけに限定しなくてもいい。
たとえば、進学、就職、昇進、恋愛、結婚、さまざまな夢(たとえば、スポーツ選手・アイドル・役者・絵描き・漫画家・デザイナー・職人etc…)。
原作者と監督の、いろんな事情で芸人を辞めていったたくさんの仲間たちへの思いが混ざって、キャラクターに結実していると思う。
ただ菅田が、若い時代の役ではいいけど、歳食った役での見かけ若すぎて説得力がないので、覚めてしまった分、少し採点は辛目。
いい話でした
原作を何も見ずにこちらの作品を見ました。
一番感じたのは菅田将暉さんが演技うますぎました。
出ている全員ば演技もうまいししっかり内容を観れる作品でした。
解散ラストの漫才では涙が止まりませんでした。
相方役の二丁拳銃のツッコミの方も、やはり本物の芸人さんなだけあって、漫才は本格的でした。
芸人さんは芸人さんをライバル視してみているのって、一般人からしたらまったくわからない世界で、世界観がしっかりした映画で、面白かった!の一言でした。
木村文乃さんの変顔も最高でした。
小説も読んでみたいなって思いました。
お笑いが嫌いで本も読んでいないんですが、観てみた
夢と魂
画は綺麗です。
綺麗な画がいっぱいあっていいです。お祭りの提灯や花火の光みたいな、儚いけどあったかい感じの景色がたくさん撮られていて、その全てに統一感があり詩的で見惚れました。街を照らす朝日は、現実を残酷に照らしているようにも、夢を包み込む優しい光にも見えてとても美しかったです。菅田将暉と木村文乃のすれ違う画も、運命が変わる可能性の一瞬をスローで切り取っていたりと、なにせ詩的でした。
この映画で好きなところは、芸人が現実と向き合う時でも芸人だったシーンです。
喧嘩している時や悲しい話をしている時ですら、笑いの破片をどうしても探して見つけてしまう、この芸人にある救いようのない愛しさをドキュメントのように見せつけられた気がしました。なので、彼らがどれだけ笑っていても、笑いをもって現実に幼い悪あがきをしているその姿は、痛々しいほどに芸人でした。でも、そこで普通に笑っている観客がいたので集中が途切れて個人的に嫌でした笑
後、神谷のカリスマ性はよく分からなかったのですが、変な方向に落ちぶれていってしまう危うい魅力は理解できました。桐谷健太の衣装も全部オシャレでしたし笑
でも、あの最期の漫才はちょっと異議あります。そこまで芸人として何が面白いか真剣に考えてやってきたなら、最期の最後で感動に逃げるなよと僕は言いたい。あの徳永の叫びが本物だとは思います。けど、芸人を誇るなら最後まで人を笑わせろよと。涙浮かべてでも笑いを取りにいって最期を飾って欲しかった。それが芸人の美しさの極限だと思うのです。あんな感動に酔うみたいなリアルは芸人じゃなくてただの人です。そこで感動に逃げるからお前ら売れんかったんちゃうんかい、くらいまで僕は腹が立ちました。その弱さも含めて芸人の悲哀なのかもしれませんが、折角なら最後まで強がる、笑いをもって現実に反抗する芸人を見たかったです。素人が偉そうにすみません。
まあ多分小説だったら勝手にイメージできるんだと思いますが、映像だとそれが全てなので言いたくなることは別れるのだと思います。芸人の認識だって人それぞれですよね
いいとこ悪いとこ
そんなでもなかった
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