「兵どもが夢の跡。夢の跡に送る憧憬の物語。」火花 コバヤシマル2さんの映画レビュー(感想・評価)
兵どもが夢の跡。夢の跡に送る憧憬の物語。
内容は、お笑いコンビピースの又吉による原作火花を映画に起こした物語。漫才で一発大きな花火を都会で打ち上げようと集まる若者達の野心的で一心不乱・不器用で純粋・狡猾で愚鈍な泥臭い心熱くなる物語。
印象的な台詞は、『捨てれる事だけを誇らんといて下さいよ』主人公の徳永が師匠の神谷に噛み付く台詞。自分の限界と尊敬とが対立した叫びの様な台詞には、芸人としての世界の残酷さを垣間見た様な気がして、自分にも溜まった感情がある事に気が付いた。
印象的な状態は、砂に埋まって頭出す神谷・東京タワーの天辺に突き刺さる神谷・巨乳振り乱しながら馬に乗ってくる神谷と規格外の行動をする笑いに取り憑かれた様な特異な人物像を表そうとしている映像表現の弱さを感じた所。もう少し神谷の無邪気さが悪意に満ちた危険を孕み徳俵ギリギリの攻防加減が徳永の尊敬に値する所を見たかった。
印象的な場面は、全て終わった後の爽やかな渋谷の光景が美しくて良かった。雑踏乱れる都会での静かな光景は、そこに気付かねば分からない兵たちが数え切れず居ることを思わせます。
『何やっても芸人に引退はないねん』神谷が徳永に放つ言葉には、まだ始まってすら無い人生への応援歌の様な気がして原作読んで分かっていながらも胸が熱くなります。
又吉直樹の自伝的小説には、心理描写が巧みに使われて芥川龍之介テイストもマッチしている素晴らしい作品だと思います。この小説の深みを映像で表現する事の難しさを感じました。話の流れも分かりやすく芸人としての裏側を描いた物語には、やりたい事に挑戦する人々に刺さる元気の出る撮り方は素晴らしいと感じます。中々想像が膨らんで補正する事の難しさを感じました。