「あれもこれもニセモノだが作品はホンモノ」嘘八百 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
あれもこれもニセモノだが作品はホンモノ
あまり興味のなかった作品だったけど、続編が作られるほどならもしかしてと思い観ることにした。これが予想に反してなかなかヒットだった。
メインのストーリーは結構知的で洒落っ気もあり粋だったし、その他の部分では良い話もあったし、笑えて面白かった。
予算が少なく撮影期間も短かったらしい本作。確かにクオリティは高くないけど、気合い入れなきゃいけないポイントはちゃんとおさえていたと思う。
それはどこかというと、ラストの大一番ではなく、佐々木蔵之介演じる野田佐輔が茶器を造る場面だ。
則夫とともに利休探求をし、目覚め、茶器造りに打ち込んでいく姿は、青春映画さながらの熱さをもったイイ場面だったではないか。思わず「頑張れ」と声をかけたくなるほどに。
それは利休の茶器であると同時に佐輔の最高傑作を生み出そうとする姿でもあるのだから。
佐々木蔵之介さんはあまり好きではないんだけど、この人は本当にイイ顔するんだよね。大事なポイントになる役をこの人が演じていると作品が締まるよね。今回はダブル主演の片割れだったけどさ。
どちらかといえばメイン主演の中井貴一さんも良かったよね。笑わせ担当の役だったけどね。
目利きが大事な骨董屋でありながら占いを信じているところとか笑えるよね。
それに、すき焼きの食べっぷりなんかのコミカルな演技は絶妙でもありました。
本作がバディ物と言っていいかわからないけど、大体は凸凹コンビだったり、性格が全く異なっていたりするものだけど、則夫と佐輔は二人とも、誠実さもあるマヌケな小悪党で、ニセモノの父親っていう似た者同士だったよね。それが妙な一体感を生んでいて良かったようにも思う。味わい深い良作でした。