「生きる」空(カラ)の味 高岡 正和さんの映画レビュー(感想・評価)
生きる
「摂食障害」という病いに侵された
ある一人の女子高生からみた世界が、描かれている。
彼女の家族は、優しく温かい。友人にも恵まれている。
むしろ恵まれた環境に生きているようにみえる彼女に、
なぜ?と理解できない人もいるかもしれない。
摂食障害でご高名な先生が、この映画をみて、
「この話の重大な転機は、母と娘が階段を上るシーンにある」
とおっしゃっていた。
ぼくはそれを聞いて、そうかもしれないし、
そうではないかもしれないとも思う。
母と娘の関係が摂食障害の病理に関係しているというのも、
一般論としては、その通りだと思うけれど、
ただ、一つ言えることは、
この映画が伝えたかった大切なメッセージは、そこではない。
過食したり、ごはんを食べなかったり、
手首を切ったり、死にたいと言ったり、
そういう部分だけに注目して、
一喜一憂したり、変えさせようとするのって、
それってどうなんだろう。
病気だとか病気じゃないとか、
そんなことも、重要じゃないのかもしれない。
だって、あなたはあなただから。
いまここで、あなたが感じているものに、触れていたい。
みんな、必死に生きている。
生きるために、病気になっただけなのです。
空っぽでもいい。こだわりがあってもいい。
今日もダメでいい。明日がダメでもいい。弱くたっていい。
痛みを知って、終わりのない海原を、
もがきながら必死に生きている命は、なんだか愛おしくて、
それが、同じ痛みを知る誰かの、生きる励みになります。
だから、生きててくれて、ありがとう。
今度は一緒に、晴れ間がみえるといいね。
切なく、そしてどこか優しい映画です。
医者として彼女たちにできることってなんだろうって、
見つめなおすことができました。おすすめです。
コメントする