「目に見えない世界の存在を身近に感じさせてくれる作品」DESTINY 鎌倉ものがたり 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
目に見えない世界の存在を身近に感じさせてくれる作品
ヒットシリーズ「ALWAYS 三丁目の夕日」のチームが再集結して作ったファンタジー。夫婦、家族のドラマあり、怪物が暴れ回るアクションありと、大人も子供も楽しめる映画になっています。原作は西岸良平の漫画。
この作品は、魔物や霊界を扱う作品としては、おどろおどしくなく、目に見えない世界の存在を身近に感じさせてくれる作品です。
宗教の立場から見ても、なかなか正確な霊界描写に驚きました。例えば黄泉の国の姿は、それぞれ心に描くイメージによって、千差万別なんだというのです。そして黄泉の国に向かった主人公が、そこで魔物と対峙する方法も、心に武器や防御となる障害物描くことで対抗していくというものでした。
また輪廻転生や永遠の生命についても、宗教に関心のない人にも、違和感なく共感できる展開となっています。特に結婚する男女の縁については、少々気恥ずかしくなるくらいにロマンチックに描かれていて、まさにタイトルどおり『DESTINY』なんですね(^^)その意味が分かると、カップルや夫婦で一緒に見に行くとき、きっとお連れの方を見る目が変わっていると思もいますよ。
目に見えない世界と現世が一体となってつながっているのは、鎌倉という特殊な地域だからと原作は説明しているようですが、映画の後半では、決して鎌倉特有なことではなく、人は誰もがやがては死んでしまうという普遍的なテーマとして描かれていることにも好感が持てました。
物語は、鎌倉在住のミステリー作家・一色正和(堺雅人)とその幼妻・亜紀子(高畑充希)を軸に、前半は、当たり前のように魔物や幽霊、妖怪と出くわす鎌倉での2人の暮らしをほのぼのと描きだします。また後半では、まだ死ぬはずではなかった亜紀子の命を取り戻すため、黄泉の国に向かう正和の冒険を派手なアクションを交えて描くという内容です。
ほろりとするエピソードを積み重ねていく構成は「三丁目の夕日」に通じる。安藤サクラが演じた人間味のある死神とのやりとりも愉快でした。
特に面白かったのは、一色家に居座った貧乏神(田中泯)と亜紀子の交流。嫌われ者に親切にしたことが後半に生きてきます。
バラバラに思えたエピソードが結び付き、なにげない小道具が大きな意味を持つ。うまい脚本だなぁと思えました。
山崎貴監督が得意のCGで作り上げた黄泉の国。そこに向かう江ノ電の走行シーンは、ファンタジー好きの心をくすぐるはずです。最後の戦いはいささか怪獣映画のようで、本作のロマンチックな雰囲気とは大きく異なるけど、きっと子供たちには、そこが一番楽しいかもしれませんね(^^ゞ
劇中、高畑充希の大きなお目々がさらにクローズアップされて、まるで妖怪のように見えてしまいました。その分、本作のヒロインとしての存在感にはとてもマッチしていたと思います。