劇場公開日 2017年6月3日

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「ギリシア神話をモチーフにしたのは正解」ダブルミンツ R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ギリシア神話をモチーフにしたのは正解

2024年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

タイトルの意味…は、ハーブのミントだろうか? つまりこの作品は、ミントのように刺激の効いたものがダブルになった状態を意味するのだろうか。
TVの哲学者が話す「アンドロギュノス」とは今でいうところのLGBTに、傲慢さが加わったもので、第3の性の神としてギリシア神話に登場する。あまりにも傲慢であるが故、真っ二つにされた。だから自分に欠けているもう片方を追い求める。
この神話をモチーフに主人公二人のミツオの数奇な運命を描いた作品。
両性 そしてBL系
刑事がヤクザに対し質問する。「なぜ男ばかり?」 男色を匂わせるセリフ。
ヤクザを男色にまで落とし込み、一番下っ端のミツオに対しシャブを使って組員総出でレイプするあたりは気持ち悪さと恐ろしさに加え、そこまでヤクザというのは落ちぶれたのかと思わせるが、そこには「その種」の統一感が生まれている。
足を洗いたいと懇願するミツオに、最後の仕事だと言って拳銃を渡し、敵対する組に脅しを掛けさせるが、大騒動になったことで途端に縮こまるあたりも、ヤクザ組織の脆弱化を露呈している。
この弱さはアンドロギュノスの意味合いも弱めてしまっているように思うが、反対にそれを浮き彫りにしたかったのだろうか?
この作品はおそらく娯楽系だと思うが、気分がスカッとするわけでもなく共感できる部分もないが、アンドロギュノスというモチーフを使っていることで、すべてがまとめられている。
また、高校時代の出来事もそれを理由にしている。人間ではない第3の性。この概念が主人公二人のミツオの原動力となっている。
しかし共感できない。
さて、
高橋和也刑事は、女を殺して埋めたと自首した市川と壱河を追いかける。
そこに犯罪は存在しないが、なぜ彼は二人を追いかけたのだろう?
刑事は「いつも一人」で行動している。このひとりというセリフが2度登場することから、刑事は二人のミツオの対局だと思われるが、その意味と厚みが感じられない。逆に、一人だから二人にかなわないという設定なのだろうか?
同じように、「お前、一生俺の犬になれ」という高校時代の出来事には意味を感じるが、まるで厚みがない。
女を殺しておいてミツオを呼び出し、穴を掘って埋めさせ、勝手に恐ろしくなって自主すると言い出す反面、恐ろしい速さでキレ、暴力をふるうあたりの短絡さのギャップを持つミツオと、普段は従順でおとなしいが、人を埋めるにあたっての冷静沈着なミツオもまた対局している。
これらの不自然さがすべて「アンドロギュノス」で解決させているのは見事だ。
ヤクザ組織にとって、警官を撃ったことは致命傷だろう。
犯人のミツオを韓国へ密入国させることで組とは関係ないことにする。同時にミツオに脅され言うことを聞くあたりもヤクザというものの弱さを感じる。
そこには二人のミツオの強さには感じられない。後を追いかけてきたミツオに「お前俺と一緒に死ねるか?」というが、それこそが二人でいることの安堵感なのだろう。
そうであればこの作品は二人の絆を描いていることになる。
なるほど~ わかりたくない気持ちがこの作品を見えなくしているのかもしれない。
この二人の絆に割って入ろうとする「すべて」に、ふたりが「数奇さ」を感じつつも微妙なスタンスのまま対峙しているのがこの作品なのだろう。
BL系 最も苦手です。

R41