「ロスト・ダイナソー ハイブリッド・ワールド」ジュラシック・ワールド 炎の王国 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ロスト・ダイナソー ハイブリッド・ワールド
今年は第1作目が公開されてから25周年。
衰えぬ人気を見せ付けメガヒットとなった『ジュラシック・ワールド』待望の続編で、シリーズ通算5作目。
再び、恐竜の世界へ!
今回かなり賛否両論になってるようだが、今回も上々。
と言うか、このシリーズの面白さ/楽しさはもう安定。
大スクリーンで見るティラノや恐竜たちへのワクワクは永遠。
そんな恐竜たちが襲い来るスリル。
映画史上屈指のエンターテイメント・シリーズ。
夏、劇場大スクリーンで見るにぴったり。
今回の話題の一つは、恐竜たちが棲む島の噴火。オーウェンやクレアらは恐竜たちを助けようと奔走する。
恐竜パニック×ディザスター・パニックという、まるで映画2本分!
迫り来る噴煙や溶岩のハラハラ、噴火の迫力は申し分ナシ。
『インポッシブル』で恐ろしいまでの津波のディザスター描写を見せてくれたJ・A・バヨナが手腕を奮う。
第1作目を彷彿させるシーンや演出も。
登場する恐竜の種類はシリーズ最多。
また、ジェフ・ゴールドブラムの当たり役、マルコム博士の復帰。
今回も話題や見所は尽きない。
楽しめたのは楽しめたのだが…、正直、前作ほどではなかったかなと。
前作は久し振りのシリーズ最新作という期待値の高さもあったし、それに今回は難点もちと多かった。
最初に上々と言っときながら不満点の方が多くなりそうだが、順々に。
えっと、まず、復帰が嬉しかったマルコム博士だが、出番は最初と最後だけ。もっと話に絡むのかと思ってた。
新たな登場人物の一人に、ある女の子。
この娘の母親は…? と同時に、少女の秘密。
確かにショッキングではあったが、何だか肩透かし。てっきりシリーズ縁の人物の娘、例えばハモンドの孫娘の子供と思ったら…。
一番の難点は、すでに多くの方が指摘してる通り、前半と後半の落差と言うか、作風の違い。
前半はスケールもスペクタクルも充分。
ところが、後半は…。
いや、後半だって悪くはない。
シリーズ永遠のテーマである人間の傲慢や過ちにより深く踏み込んでいるし、ある場所でのサスペンスはまるでホラーのように濃厚。
でも、前半と比べるとエンタメ性やスケールは格段にダウン。
この前半部分だけで一本の映画に出来る。
そして、それに拍車をかけるハイブリッド恐竜。
ハイブリッド恐竜はもういいよ…。
前作では久し振りのシリーズ最新作の目玉としてアリだったが、今回はもう完全な二番煎じ。
さらに致命的な事に、今回のハイブリッド新恐竜=インドラプトル、前作のインドミナス・レックスのDNAにヴェロキラプトルのブルーの知能を併せたより最凶な筈なのに、体格も小さくなってインドミナスのような暴れっぷりもあまり無くて、明らかにインパクトダウン。
最後はお決まりのようにこのハイブリッド恐竜が襲いかかるパターン化。
ハイブリッド恐竜の存在が、何だか恐竜映画というよりモンスター映画のよう。
これまで散々モンスター映画好きと言ってきながら今回否定するような事言ってるようだが、モンスター映画にはモンスター映画の魅力や醍醐味があり、恐竜映画には恐竜映画の魅力や醍醐味がある。
劇中の人間の過ちさながら、それらを混合してはならない。
ドラマ部分は弱い点となかなか悪くない点が見受けられた。
噴火から恐竜を助けようと主人公たちに協力する財団に裏がある事なんて、子供でもすぐ分かる。
放棄され自然に返った島、恐竜狩り、恐竜の本土上陸などは『ロスト・ワールド』を彷彿させ、展開が何となく読めてしまう。
その一方、
オーウェンたちは再び島へ。あんなにワクワクするようなテーマパークだった島が荒れ放題に。パーク時代同様、変わらぬ惨事の歴史の繰り返し。
噴火から恐竜たちを助け出す。助けたいという気持ちは確かに分かる。
でも、果たしてそれは本当に正しいのか…?
恐竜たちはかつて自然の寿命を全うし、絶滅した。今また恐竜たちが絶滅しようとしている。
酷な言い方かもしれないが、生きるも死ぬも、自然の手に委ねるべきではないのか。
蘇った恐竜たちにもう一度、絶滅の苦しみを強いるのか。島に取り残されたブラキオサウルスが噴煙に呑み込まれるシーンに胸が痛くなった。
人間が勝手に恐竜を蘇らせ、そこにまた人間の手が加えられたら、それこそ人間の傲慢だ。
だから、恐竜で金儲けや生物兵器利用を目論む人間の醜いエゴがいつまでも続く。
第1作目で、印象的な名台詞がある。
「神は恐竜を創り、恐竜を滅ぼし、人間を創った。
人間は神を滅ぼし、恐竜を創った」
今回これに付け加えるなら、
「そして人間は尽きぬ欲にまみれ、同じ過ちを繰り返し、禁断の扉を開いた」
ラストは人によっては恐竜たちが新たな道へ歩み出したとも感じるが、個人的には、とんでもない事をしでかしたと思った。
本当にあれで良かったのか…?
禁断の扉を開け、解き放れた“恐竜の世界”は…?
…という訳で、2021年公開予定の第3作へ物語は続く。
何と言うか、話を散らかしてしまったと言うか、次でちゃんと話の収拾を付けてくれるのだろうか。
また更なる最凶ハイブリッド恐竜が登場して(しかも今度は翼竜のDNAで空を飛び、怪光線まで吐き)、オーウェンやブルーやT-レックスらが立ち向かうなんて話にまたなったら、もういいや…。
次は原点回帰、純粋に恐竜たちの魅力や恐竜たちへの感動、あのラストの後の恐竜たちの命運を描いて欲しいと切に求む。