「ラストとエンディングが秀逸。」バリー・シール アメリカをはめた男 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストとエンディングが秀逸。
エンディングにバグが入りましたが、劇場で鑑賞したのだもの、演出としてバグが入っているんだよね?
狂騒的な時代の軽躁状態のバリーの人生を、軽快な音楽にのせて軽いコメディタッチで描いた作品かと思っていたら、最後のラストとエンディングの演出でやられました。印象付ける作品となりました。
このセンスに脱帽。
トム様スマイルに見惚れて、つい細かい表情等を見過ごしちゃいそうになるけれど、これまでの役とはまた違った人物を見せてくれます。
やっていることはバブリーなんですが(と言ってもゴージャスな場面はあまり出てこない)。
軽薄!と退けたくなるような軽い、イケイケな作り。
その中での、妻・家族を大事にする良い奴ぶりに、JBをなんとかしようとしたり、冷や汗かいたり、最高のおもちゃ(飛行機)を見せられて、自分のテクニックをおだてられて、馬鹿な話に簡単にのっちゃう小市民ぶりに笑ってしまう。
いつもの華麗で頼りがいがあって格好良いトム様を殴り捨て、これでもかという格好の悪さを出してくる。
一つのちょい悪を犯した後は、「NO」という選択肢のないまま、転がりだして底なし沼にはまってしまった人生。まるで、軽い気持ちで万引きや麻薬に手を出してしまった非行少年がたどる人生のようだ。
やっていることも生理的に嫌悪感が湧き出てくるし、性格的にもこれだけしょーもない男。なのに、だんだんと、どこかバリーが愛おしくなる。丸まった背中が愛おしく、抱きしめてあげたくなる。トム様じゃなきゃこんな風に演じられないよな。
原題は風刺が効いている。原題を頭に置きながら映画を見ると違った感想を持つだろう。
原題のままでは私たちにはピンとこないんだろうけれど、トム様ファンなら絶対観るし、口コミでも広がると計算できるほどの度量が欲しかったかな。
邦題だとそれこそ「配給会社にはめられた」感が満載で、満足度下がる。
そんなバリーの一代記のふりして、USAの暗部を燻りだした勇気に拍手。
監督のインタビューに、この映画を観て、興味がわいたら調べてほしい、誰かと語ってほしいとあるが、USAの裏歴史を繰り返さないための入り口となってほしいと、切に願う。
という、とんでもないできごとの映画ですが、トム様の操縦で飛ぶ空は最高です。
ぜひ、フライトも楽しんでください。