「これぞ独特の湯浅のうた」夜明け告げるルーのうた 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ独特の湯浅のうた
神山健治、米林宏昌、新房昭之ら今年は気鋭のアニメ監督の新作続いたが、いずれも今一つピンと来ず。
本作と『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅政明監督の2作には期待していた。
それほど多くの作品を見ているって訳ではないが、『マインド・ゲーム』やWOWOWで放送した『ケモノヅメ』『カイバ』などは見た事あり、アニメ監督数いれど、とりわけ独創的な作品作るなぁ…と思っていた。
好き嫌いははっきり分かれる作風だが、『夜は短し歩けよ乙女』は国内ランキングに入り、本作はアヌシー国際アニメーション映画祭であの『この世界の片隅に』を抑え最高賞に輝き、一気に飛躍&メジャーデビューと言った所。
特に本作は気になっていた。
人間の少年と人魚の少女の交流という、オリジナル作としては王道的な話ながら、湯浅監督“らしさ”は惜しみ無く。
まず、昨今のアニメの定番の圧倒的な映像美やリアリティー、昔ながらの懐かしさや温かみとは違う、独特の画のタッチ。
基本シンプルだが、海中ではフニャフニャになったり、回想シーンでは突然カラフルなタッチになったり、ルーのパパが燃えながら走るシーンは凄みを感じさせたり、柔軟に変化。
海水を空中に浮かばせる事が出来る人魚のルーの不思議な能力、クライマックス、町を浸水する緑色の海水など、ファンタスティックな演出。
ルーと主人公の少年カイの交流は、歌。歌やダンスのシーンはポップ。
所々シュールでもあり(何つっても、海から上がりスーツに身を包んだサメのルーのパパ)、もう本当に何と言ったらいいか…見て貰うのが一番の湯浅ワールド。
心を閉ざすカイが、歌を通じて同級生の遊歩と国夫とバンドを組み、ルーと出会い、変わり始める。
が、住んでいる寂れた港町には人魚は災いをもたらすと言い伝えられている。
ある時、ルーの存在が町の人にバレ…。
今風だと思ったのは、ルーを使って町興し。
しかし、ひと度事件が起これば、手のひら返し。
やはり言い伝え通り、恐ろしい存在。
そんな人間の…いや、大人の都合・傲慢こそ恐ろしい。
こんな事いっちゃあおしまいだが、主人公である筈のカイとルーがちと魅力に乏しい。
ルーは愛くるしさはあるが、カイに至っては時々感情の変化についていけない。明るくなったと思ったら、ルーの町興しを機に何が面白くないのかまた塞ぎ込み、ルーの救出も町の水没を食い止めようとするクライマックスも周囲に鼓舞されてやっと。
むしろ、真っ先に行動した遊歩や国夫の方がいいキャラしてる。
悪くはなかったが、かといってスゲーサイコー!…ってほどでもなく。
でもオリジナリティーに溢れ、ユニークで、今年公開の邦アニメでは期待を下回るものではなかったと思う。
明けましておめでとうございます!(言いましたっけ?)
こんな面白いアニメがまさかのEテレで放映されるなんて!
ほとんどの方がポニョと言ってますが、俺的には玉ちゃんw
打ち込みなんかも興味深く拝見しましたし、音楽好きの方にはたまらない作品だったかと思います。『心が叫びたがってるんだ』も同様ですw