「現在進行形の戦争と沖縄の底抜けに明るい生き方」標的の島 風(かじ)かたか fuhgetsuさんの映画レビュー(感想・評価)
現在進行形の戦争と沖縄の底抜けに明るい生き方
三上智恵監督の「標的の島 風かたか」を、今池シネマテーク上映初日に観てきました。
もう戦争という言葉に慣れてしまった感じの本土ですが、もっともリアルに脅かされてるのは沖縄の人々でしょう。
監督の一作目を観て、二作目を見逃し、これが三作目。
反対運動とか座り込みとかネガティブにとられるけど、これが沖縄の命をつないできた“風(かじ)かたか”なんだと。
圧政は今にはじまったことでなく、唄に変え、三線を奏で、踊って、抵抗しつづけてきた命の証し。
風を受ける防波堤となって、子や孫を守ってきた。
それが今、辺野古、高江、宮古、石垣と、次々と狙い撃ちされ、標的にされていく。
反対運動のリーダー博治さんも、文子おばあもクローズアップされてるけど、みんな一人ひとりが主人公。
悔しくて虚しくて、思わずこちらも号泣。
他人事じゃないからね。
だけど、そのことだけを伝える映画じゃなかった。
それらを記録した重要なシーンをカットしてでも残したかったというエイサー、パーントゥ、アンガマの3つの祭りシーン。
大地に根っこをはって生きる。
島そのものが命で、先祖を尊び、子や孫につなぐ、全体としてのしなやかさ。
ちいさな一人であっても、そうした目に見えない島の風土に突き動かされる力強さのようなものを感じた。
先島の宮古や石垣は非常に危険な方向へ向かってるけど、その祭りからわかるように、沖縄本島とは違う風を吹かせる可能性を秘めている。
そこにスポットを当てた三上監督は、まだまだ沖縄の底力を信じてて、まだまだ映画の力を信じてるんだと思う。
暗い映画と敬遠されがちなドキュメンタリーだけど、他人事ではない現在進行形の戦争と、沖縄の底抜けに明るい生き方を学びたい方はぜひ。
初日1発目の午前の部は満席で立ち見の大盛り上がりとなり、内心ほっとしました。
ぜひ多くの方に伝えたいメッセージがたっぷりの映画。
テレビでは絶対に流さないドキュメンタリーだからこそ、わざわざ映画館まで足を運んでみてください。