「コストコの宣伝かと思った序盤・・・」ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
コストコの宣伝かと思った序盤・・・
痛みが伝わってくる作品。テロの被害者が立ち直り、成長していく物語かと思ってもみたが、そんな単純なものじゃなかったようだ。『パトリオット・デイ』は未見なので、緊迫感ある爆破や怖さ、犯人逮捕までの道のりはよくわかってないのですが、TVの「アンビリバボー」でカウボーイハットのカルロス・アレドンドのストーリーは記憶にありました。
元恋人がボストンマラソンに参加するためにゴール近くで応援に向かったジェフ・ボーマン。事件に巻き込まれ両脚を失うことになったが、この辺りの描写は序盤だけで片付けて、その後のジェフの過酷なリハビリ、トラウマ、そして再び恋人として真摯に看護するエリンの姿を中心に描いてあった。思い切った編集により、トラウマ部分となる事故直後の凄惨な地獄絵図は小出しにしていて、PTSDによる痛みが切実に伝わってくるのだ。さらに、綺麗な場面ばかりじゃなく、風呂場でウンコしたり、酔って風呂場の中でクソまみれになるところなど、汚さも平気で映画いているのです。また、彼の母親や叔母など、酔っ払ってばかりで決して平穏じゃない家族をも描いた英断。
こうした“その後”のリアリティを追求し、マスコミによる取材を頑なに断るようになったエピソードや、挫けそうになるダメ男ぶり、決して英雄じゃないんだという本人の意志まで伝わってくる。よって、この放題はおかしすぎる。ただ、人々に勇気を与える平凡な男なんだ思う。
さらに、命の恩人カルロスと会おうとしないジェフ。会えばまたトラウマによってずたずたにされるからだ。ところがエリンの妊娠のこともあり、会ってみることになるのだが、カルロスの身の上話を聞かされることによって・・・。カルロス自身もジェフによって勇気づけられ、レッドソックスの始球式に出られるまで心も回復に向かう。
「テロには屈しない」というテーマじゃないと感じた。それはこのカルロスの背負った宿命のようなもの。息子を戦争で失い、下の息子も自殺したという事実。明らかにすべての戦争に反対するようになった彼の生きざまが伝わってくる。史実とは時間の経緯も違うだろうし、笑えるエピソードも付け加えたことは賛否両論あるでしょうけど、笑える部分があるからこそ、このカルロスとの再会シーンが感動を呼ぶのだと思う。