劇場公開日 2017年6月9日

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「主役までも欲張る、"バーグ師匠"の3作目。」パトリオット・デイ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0主役までも欲張る、"バーグ師匠"の3作目。

2017年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

マーク・ウォールバーグ × ピーター・バーグ監督のコンビで、今年2作品目というスピードで公開されたのが、本作である。記憶に新しい、2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件を描く。タイトルは、毎年ボストンマラソンが行われる日、"愛国者の日"から取っている。

正確に再現した現場セットでの撮影、それを実際のニュース映像を挟み込む編集で、まるでドキュメンタリーを観ているかのようだ。唯一、マーク・ウォールバーグ演じる主人公トミー・サンダースだけは架空の刑事である。テロ事件の発生から、被害者のようす、捜査関係者の動きなどの記録をもとにして、サンダース刑事を中心とした俯瞰視点で全体をまとめているところが秀逸だ。整然と時系列に進んでいく。

とくに亡くなった方はもとより、四肢の部分欠損を負った被害者の精神的な衝撃と、後日談までが紹介されていたのが印象的だ。テロ犯罪の不条理をひしひしと感じさせる。

映画化までのスピードも速いが、事件自体の解決も102時間だったというから、いかに事態が迅速に進んだかが分かる。映画としてのテンポも、たたみ掛けるように展開する。とても完成度の高い作品だ。

ところで、マーク・ウォールバーグ × ピーター・バーグ監督のコンビは、"事故・事件フェチ"じゃないだろうか。この"バーグ師匠"(笑)、不謹慎かもしれないが、ほんとに事件の実録大好きである。

つい4月にも「バーニング・オーシャン」(原題:Deepwater Horizon/2016)が公開されたばかり。2010年のメキシコ湾で起きた海底油田、"ディープウォーター・ホライゾン"の爆発事故をリアルに再現した。その徹底したリアリティは、火災モノのマイルストーンとなる名作「バックドラフト」(1991)や「タワーリング・インフェルノ」(1975)にも匹敵する、新たな火災描写を見せてくれた。それだけにアカデミー賞でも部門ノミネートされている。

また「ローン・サバイバー」(原題:Lone Survivor/2014)では、米海軍特殊部隊ネイビーシールズ創設以来最大の惨事と言われた"レッド・ウィング作戦"を題材にしていた。こちらもアカデミー賞にノミネートされた。

大昔なら、この手のハリウッド大作は大ヒットしていた。しかし、"バーグ×バーグ"作品の国内興収は、いずれもパッとしていない。

事件が日本人にとって、"他人事"であることはあるが、なにより実録好きのマーク・ウォールバーグが裏方で我慢できず、主演をやりたがるからかもしれない。というのも、同じ実録派のクリント・イーストウッド作品は、主役を含むキャスティングを最適化して成功させている。

どうしてもマーク・ウォールバーグは、クマのぬいぐるみとつるんでいるか(「テッド」)、変身ロボットとたわむれているか(「トランスフォーマー」)、大人げないイメージが拭えなかったりする。

でも、それはそれで、いい映画だと思う。

(2017/6/10 /TOHOシネマズ日本橋/シネスコ/松崎広幸)。

Naguy