オーシャンズ8 : 映画評論・批評
2018年7月24日更新
2018年8月10日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
作られるべくして作られた、リッチでゴージャスな“女性版ケイパームービー”
ダニー・オーシャンに同じ才能に恵まれた妹がいたなんて、知らなかった! しかしまあ、続編のためにオーシャン家の家系図を書き換えるのは容易くて、作られるべくして作られた“女性版ケイパー(金庫破り)ムービー”がゴージャスに立ち上がる。
デビー・オーシャンが刑務所の中で秘かに練っていたのは、兄たちが知恵を絞り合い挑戦した金庫破りではない。狙うのは、毎年5月の第一月曜日の夜、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるチャリティイベント、メットガラで、セレブがその首元に付ける時価1億5000万ドルのダイヤモンドネックレス+αだ。セレブ、メットガラ、ダイヤモンドと来れば、女の出番でしょうが!?
仮釈放後、デビーがその足で相棒のルーに声をかけ、ファッションデザイナー、宝石職人、盗品売買のエキスパート、天才ハッカー、スリ等、ダイヤ強奪作戦に必要な面々を次々リクルートして行くスピード感、各々のスキルを生かした下準備と、やがて訪れる作戦実行当夜、防犯カメラの死角を狙った強奪の瞬間のスリル&サスペンス、ターゲットにされたセレブの意外な行動と、ラストに用意されたリッチな+α。以上、起承転結の明確さが命とも言える作品全体のフォーマットは、前シリーズを真面目に踏襲してはいる。
老舗宝石工房、カルティエが映画のために制作した重量感たっぷりのダイヤネックレスを始め、アルベルタ・フェレッティのシースルードレスで登場するデビー役のサンドラ・ブロック、エメラルドが縫い込まれたジバンシィのジャンプスーツで現れるルー役のケイト・ブランシェット、ヴァレンチノのホットピンクのドレスを纏うセレブ、ダフネ役のアン・ハサウェイ等、女優陣の華麗なキャットウォークも、期待に違わぬ仕上がりだ。
最大のサプライズは、ハイブランドを身に付けたオスカー女優たちを尻目に、小高いドレッドヘアーにニットキャップというストリートファッションをヒッピーに着こなして場をさらうハッカー役のリアーナが、誰よりもファッショニスタだったこと。そして、念入りなメイクとコスチュームで感情を押し隠し、目的のためなら平気で相手を欺く女たちの方が、実は男よりケイパームービー向きだったこと。作られるべくして作られた映画は、本当は、もっとずっと前に作られるべきだったのだ。
(清藤秀人)