「世にも奇妙な変人達の宴」アダムズ・アップル しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
世にも奇妙な変人達の宴
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年配のお客様に「どんな映画?」と聞かれた上映館のスタッフさんが、「ちょっとブラックなヒューマンドラマです」と答えていた。説明と勧め所の難しい、このような作品は大変だな。
狂気あり、暴力あり、笑いあり。不条理で、難解で、でも何故かラストはちょっとほっこり。
キリスト教的メタファーに満ちているのは間違いないが、教訓があるような無いような、ただアイロニカルな笑いに気持ちよく転がされているだけのような
飄々とした、奇妙な魅力を持つ作品である。少し落語の感覚にも似てるな。
全員が全員普通じゃない登場人物達。刑務所上がりのネオナチマッチョが、イヤイヤ、可笑しいだろ!と、ツッコミ役に回る有り様。
独善的盲信的な神父の、狂気を感じる気味悪さ。彼の盲信を裏付けるかのように次々と巻き起こる事件。明らかな欺瞞を暴く事で、むしろ崩れていく平穏。人としての欠如がもたらす救い。
そして、いつの間に何故か辿り着く。冒頭で悪意を持って車体を傷つけたナイフで、小さなリンゴケーキを切り分けて、むさ苦しい男が二人、並んで頬張る絵面の微笑ましさよ。何がどうしてこうなった。
世界はかくも不可思議。人間如きのちっぽけな善悪論で、サックリ切り分けられるものではないのだ。
暴力もグロ表現も多少あれど、差程陰湿でなく、バイオレンスの苦手な私でも拒否感なく見られた
死や宗教、人種に関してのかなりブラックで際どい表現、ナンセンスな展開は、受け手を選ぶだろうが、センスが合えば、映画ってこうであって欲しいよなーという、創作ならではの快感が得られるだろう。
それにしても、『ボーダー二つの世界』といい、北欧映画は侮れないなぁ。
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