「米作りエンタテイメントムービー、だそうだ。」ごはん Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
米作りエンタテイメントムービー、だそうだ。
「侍タイムスリッパー」の私のレビューに共感を頂いた方のレビューを読んでいたら隣に安田監督の前作「ごはん」(2017)のレビューが。はて?なんと現在都内で上映中ではないか。
9月24日(火)
都内東部にある唯一のミニシアター、客席数49の菊川のストレンジャーで「ごはん」を。
[粗筋]
父親の急な訃報に東京で働いていたヒカリは故郷の京都に戻る。幼い時に母を亡くし、東京に就職したヒカリは正月にもわだかまりのある父のいる実家に帰っていなかった。
亡くなった父は年老いた農家に頼まれ30人分の田んぼの耕作をしていた。ヒカリは米作りは素人だったが、父が残した田んぼの稲を、頼まれた農家のためにもなんとか収穫までこぎつけようと引き継ぎ、父に弟子入りし米作りを学んでいた源ちゃんと協力して米作りに精を出す。東京の派遣会社からは解雇されてしまう。ゲリラ豪雨で駄目になる田んぼが出たり、熱中症で倒れたり、収穫中にコンバインが壊れたりと、様々な苦労の中、やっと収穫にこぎつけるのだった。
自分で収穫した米を精米して炊いて食べた「ごはん」の美味しかった事。
父に感謝した時にヒカリは初めて気付く。父が亡くなるまで被っていたボロの麦藁帽子にマジックで書かれた文字に。それは小学生のヒカリが父に贈った麦藁帽子に書いたものだった。
安田淳一監督がどんな映画を撮っていたのか観てみたくて菊川まで足を運んでみたが、素晴らしい米作りエンタテイメントムービーだった。
日本の米農家の就労年齢が65歳を超えていること(新潟の私の親族も高齢で田んぼを若い人に任せている)
米作りには過去の経験則が活かされていること
稲の鮮やかな緑と田んぼを渡る風の美しい風景
黄金色に実った稲穂の頭を垂れる姿
水が出入りする田んぼの姿の変化
これらを見せ、米作りの大変さと喜びを見事に表していた。
一度押し入れにしまい込んだ父の麦藁帽子を、美味しいご飯を食べてもう一度引っ張り出して飾ろうとする時に自分が書いた文字に気がつく所も良かった。
先週「侍タイムスリッパー」を観たばかりなので、ヒカリは助監督の優子ちゃん、父親は撮影所長、おばさんはお寺の奥さん、葬儀の客には住職もいる。安田組なんですね。
そして、いちじくやトマトを作っている農家の西山さんとして登場するのが、福本清三さんだった。
鎌での稲刈りを手伝う時に「刃物の事にはうるさいぞ」なんて台詞があったりして。
結局、殺陣師の役をやってもらいたくて「侍タイムスリッパー」の脚本を監督が福本清三さんに送っていた事が、後に東映撮影所を使える事に繋がったようなので「侍タイムスリッパー」のクレジットに福本清三さんが登場するのだろう。
今日、菊川でやっと入手した「侍タイムスリッパー」のフライヤーに安田淳一監督の言葉が載っていた。「お米も映画も丁寧に作っています。」
安田監督、「ごはん」を観てもそれは判りましたよ。
コメントありがとうございます。レビュー読みました。
侍タイムスリッパーとのつながりは本筋ではありませんがグッときました。
物語そのものも米づくりのように丁寧で良かったですね!