劇場公開日 2017年6月17日

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「半沢直樹の爪のアカでも煎じて飲んでみてはどうか」リベンジ・リスト 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0半沢直樹の爪のアカでも煎じて飲んでみてはどうか

2022年1月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

復讐モノは広く勧善懲悪モノに含まれるだろうが、勧善懲悪の巨匠といえば我が国の池井戸潤の右に出る存在はちょっと思いつかない。
彼の作品をいくつか見れば、この系統の作品で肝心なのは、主人公が不幸になるのと反対に悪の側はますます我が世の春を謳歌し、それにより見る側に怒りのマグマがドロドロと溜まっていくこと、そして最後のクライマックスで火山が大噴火するよう徐々に圧力を高めていくことであるとわかる。

さて、その池井戸メソッドから本作を見ると…残念ながらいただけないのですね。
まず、主人公の不幸の程度が物足りない。奥さんがナイフであっという間に殺されるというだけだし、犯人側もとくに悪辣非道な感じがしない。
警察が犯人の味方をするのが不幸の第二弾だが、刑事たちもあまり主人公をいたぶるふうではなく、しょうがなく臭いものに蓋をしようという態度だから、どうにもマグマが沸き上がってこない。
どこが“I am wrath .”なのか、皆目不明なのである。

観客があまり気勢の上がらないうちに、主人公と仲間はさっさと犯人グループへの復讐を始める。軍の特殊工作員上がりなだけに、彼らの強いこと、手際のよすぎることに唖然とさせられる。次々に犯人たちは殺され、すぐに黒幕にたどり着くが、その黒幕の動機がまたショボいのでまたまた肩透かし。
観客がもはや怒りなど忘れると同様、主人公たちにもそんなもの毛ほども感じられないまま、最後はあっさりと軟禁状態から脱出。映画のタイトルなど忘れたかのように、さっそうと去っていく。取り残された自分は「今、何の映画を見たんだっけ?」と首をかしげているのであったw

徒然草枕