「英国ファンタジーとスペインの光と闇の文化の融合」怪物はささやく 由良さんの映画レビュー(感想・評価)
英国ファンタジーとスペインの光と闇の文化の融合
J・A・バヨナ監督の初期作、『永遠の子どもたち』が好きなので観に行きました。
原作の予備知識がなかったので舞台がイギリス(湖水地方?)ということを知らずに見ていました。
病気(癌?)を患った母親と二人で暮らすコナー。
母親の死期が近いことを悟りながらも気丈に生きようと必死でもがく中、近所の教会が建つ丘の上の木が怪物と化して彼に3つの話をする。
国を支配する地位を得るために、愛した人を殺した王子。
自分を陥れたのにもかかわらず娘の命を救うことを懇願した牧師の願いを退けた調剤師。
透明人間になった男。
そして怪物から第四の物語を話すことを強要される。
個人的には第二の物語の信念を貫くという、テーマがとても印象に残った。
怪物の物語とコナーの現実がリンクするように物語は展開され、最終的に彼の口から語られた第四の物語は彼の母親に対する今の実直な思いだった。
「本当はお母さんの死で早く楽になりたかった。」
親の介護を担っていた人から出てくるならまだ分かるが、こんな小さな子供からこんなセリフが出てしまうような状況を思うと、とても胸が痛んだ。
父が認知症の祖母の介護から解放された時も、不謹慎ながらきっとほっとしたことだろう。
途中、怪物とお母さんとの接点が描かれていて、もしやこの怪物や物語を想像したのはお母さん?みたいな描かれ方をしていたのも、にくい演出だった。
舞台がイギリスというのは物語が進んでいくうちに判明したけど、原作がイギリスの児童文学ということは後でパンフレットを読んでわかった。
人の心の闇に問いかける演出は本当にうまかったし、またその背景にあるファンタジーの要素もちゃんと出されていて、まさに英国ファンタジーとスペインの光と闇の文化の融合だと思った。