「正統派B級ホラー」アイム・ノット・シリアルキラー いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
正統派B級ホラー
いきなり松竹のオープニングロゴが3次元立体線画のようなSFチックなイメージの富士山で始まったので気になったのだが、どうも今作も含めて、松竹の新しいレーベルというか新機軸らしい。『ブルーラインとは、「新たなクリエーターの発掘、若手監督・プロデューサー等の育成を目的として、製作、公開してきたチャレンジ企画作品」。』とのこと。この作品がそれに当てはまるのかどうか分からないが、第一印象は、表題の通り。奇を衒わない演出なんじゃないかなとは思う。勿論、最後のクリーチャー出現も含めて、作品通してずっとそういう匂い(お化け&怪物等、この世にいないもの)をさせずに、最後に引っ張り出してくる演出は、今ではどの監督でも枚挙に暇がない。勿論、最後だけのシーンだから、SFXの費用が安く抑えられるという利点もプロデュース側の利点なんだろうけどね。直近だと、やはり韓国映画『コクソン』なんだろう、酷似モノでは。
主人公の白人少年は、気持ち悪い程の美男子だ。なぜかというと、まるで口紅を付けたような赤い唇。これも演出なんだろうか?吸血鬼ドラキュラのような正統派ゴシックの流れ?かもしれない。『ソシオパス』という病理も又、アメリカらしく全てを病気に片付けてしまうやり方に、却って微笑ましくなりさえする。
対する老人は、今作品売りの一つでもある『Back to the Future』のドク役のクリストファー・ロイド。日本だとめちゃくちゃ認識度は高い。どのような狂気な演技をみせてくれるのかと期待大であるが、その期待通りの殺戮振りであった。最後の得体の知れない生物が巣くっているから、あんなヨボヨボな殺戮となると水を得た魚のように軽やかな仕草で殺していく。
ポエトリーも含めて、極めてキリスト教感が強い作品であり、そのベースに触れないと理屈がわからないのだろうなと消化不良のところもある。只、殺人鬼はああいう怪物を心の中に飼いながら普段は従順に暮らしていて、自分も又もしかしたら、重油のような体液を吐出すのかもしれないと恐怖におののくプロットは非常に解りやすい。
主人公役のマックス・レコーズは今後、どんな俳優人生を進むのか、日本で言うところの天才子役の成れの果てみたいなことにならないことを祈る。