「色々と勿体無いと思った」メアリと魔女の花 よもぎさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と勿体無いと思った
初めに、私はこの作品の世界観がかなり気に入りました。
その上で気になるのはストーリーのざっくり感でしょうか。
正直作中で主人公はあんまり大したことはしてなくて、偶然手に入れた力で辿り着いた学校を見学をして、とばっちりで捕まった2~3度顔を合わせただけの知り合いを助けに行って、結果オーライで悪者の企みを潰して終わりという感じです。
色んなマジカル要素溢れる魔女の学校という舞台はサラっと紹介して終わりにするには勿体無いですね。
一晩だけ凄い魔法の力が使えるようになる魔女の花、まだ10回近くは使える状態でしたから2~3日魔女の学校に通ってマジカル学園生活のシーンを挟んでから悪者と敵対する流れでも良かったんじゃないでしょうか(ハリーポッターみたいな感じで)。
神木君演じる男主人公ももう少し掘り下げが欲しかったですね。
お互い好意は全く無い状態で、「自分のせいで捕まってしまったようなものなので助けないと申し訳ない」以上の助けに行く理由が主人公に無かったですから。
例えば、比較されることは避けられない「魔女の宅急便」では最初こそキキはトンボを煙たがっていましたが、彼の夢や人柄に触れて親密度が上がっていたからこそ、終盤でキキが危険を犯してまで助けに行くのに説得力とロマンスがありました。
本作の男主人公にも身体の弱い母の代わりに仕事をして、母に楽をさせてあげたいという男気溢れる面があるので、作中で彼の家庭をちょっとだけでも主人公と視聴者に見せて欲しかったです。
折角主人公が彼の家へお使いに行くイベントがあったのに途中で偶然会ってしまってそこで用事を済ませてしまったのは勿体なかったですね。あそこで彼の家を見てから猫探しに以降しても尺は十分確保出来たのではないかと。
とにかく、見終わってから思い返すと圧倒的にイベントが少ないのが勿体無いです。千と千尋、もののけ姫、トトロetc、人気の高いジブリ作品(勿論ジブリだけに限りませんが)なんかは上映時間に対して「本当にこれだけのイベントを消化したのか?」と疑いたくなる程色んな事が起きて、それが登場人物への感情移入やストーリーの掘り下げに繋がっていますが、本作の主なイベントは冒頭で書いた通りです。
それでも私がこの作品を長々と「ボクのかんがえたすとーりー」を書く程気に入ったのは世界観にとても魅力を感じたからです。
主人公メアリの愛くるしい仕草や言動への拘り、アナログ風の美麗な背景美術、美味しそうなご飯等にはジブリへの深いリスペクトが感じられ、視聴者を引き付けます。
神秘的で、緊張感のあるBGMは場を盛り上げてどんどん引き込む力があります(BGMマジすげえです)。
見終わったあとメアリという女の子がとても好きになっていて、だからこそもっと色々な事をさせてあげて欲しかった、もっと色んな事をしている彼女を見たかったと思うのかもしれません。
終わったあとの満足感と、もうちょっとこうだったらなぁという勿体無さ感。監督及びスタジオポノックの次回作にも期待してます。