劇場公開日 2018年6月8日

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「職人として生きていく難しさ。類を問わない玄人好みの文学的映画。」羊と鋼の森 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5職人として生きていく難しさ。類を問わない玄人好みの文学的映画。

2018年6月22日
PCから投稿

悲しい

知的

難しい

【賛否両論チェック】
賛:調律師として歩み始めた主人公が、日々葛藤しながらも成長を遂げていく姿が清々しい。音楽と自然との見事な調和も印象深い。
否:文学的な描写で淡々と進んでいくイメージなので、どうしても好き嫌いは分かれそう。

 調律師の方に限らず、「プロ」「職人」と呼ばれる方々は、皆さん外村のような苦悩や葛藤を乗り越えていらっしゃるのでしょうか。調律師という夢を叶えながらも、幾度となく壁にぶち当たり、その度に悩みに悩んで少しずつ成長していく外村の姿は、まさに1つの技を極めていく者の宿命のようです。「調律」という特殊な世界にあって、弾く人それぞれの想いを汲み取る難しさにも、考えさせられます。
 そして勿論、作品全体を彩る北海道の大自然と、ピアノが奏でる珠玉の音色の数々も魅力の1つです。外村の迷い続ける心情を、うっそうと生い茂る森の情景で描いていくのが、見事な演出でした。タイトルの「羊と鋼の森」も、ピアノの特色を的確に言い当てていて、ステキな表現ですね。
 かなり文学的な要素が強いので、好みは分かれそうですが、自分の生き方に少し悩んでいる人なんかには、是非観ていただきたい作品です。

映画コーディネーター・門倉カド