「小さい俳優では代えがたい、高度な映像テクニックによる作品」おとなの恋の測り方 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
小さい俳優では代えがたい、高度な映像テクニックによる作品
"あばたもえくぼ"という言葉もあるが、そこまでゾッコンにならばまだしも、声だけを頼りに初対面で現れた男性が、低身長だったらどうするか、というラブコメディ。
主演はジャン・デュジャルダン。モノクロサイレント映画「アーティスト」(2012)でフランス人初のアカデミー賞に輝いた、イイ男である。そのジャン、本来は身長182㎝なのだが、132㎝しかない男を演じるというから大変。
この作品の見どころは、その映像テクニックにある。小さい俳優を使うとか、逆にデカい女優を使うとか…キャラクターの大きさを錯覚させるために、単純な方法もある。過去にはシルベスター・スタローンの「ロッキー」シリーズで、177㎝しかないスタローンをヘビー級ボクサーに見せるために、対戦相手の体格を合わせたり、使用するリングの大きさを小さくしたという例がある。
本作はジャン・デュジャルダンとビルジニー・エフィラのキャスティングありきで企画されたのだろう。ジャンはもともとコメディアンであるし、加えてその知名度と演技力は、どこかの"小さい俳優"をもって代えがたい。エフィラも最近のフランス映画でひっぱりだこである。
そこでCG処理と計算されたカメラワークを駆使して、それを実現している。役者は膝をついたり、相手のいない空間でラブシーンを演じたり、セットとカメラに遠近法を使ったりしている。しかしそんなことを感じさせないで、楽しく観ることができる。
ストーリーは単純凡庸なので、映像テクニックに感心するべきである。絵づら的にも、身長格差カップルは、ヘンな喩えだが、1950年代の"囚われた宇宙人の写真"のような滑稽さを醸し出す。
"差別"を扱った映画には、いくつも対象マイノリティとアプローチがあるが、明るい性格の主人公の自虐ギャグと、コミカルなエピソードで、きれいにまとめている。本作は"身体的障害者"をテーマにしながら、本当の障害は、それを排除しようとする心のほうにあると指摘する。
(2017/6/18 /ヒューマントラストシネマ有楽町 /シネスコ/字幕:加藤リツ子)