「アナ・ウィンターありきで」メットガラ ドレスをまとった美術館 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
アナ・ウィンターありきで
ジャームッシュ映画の常連ジョン・ルーリーがチラッと映っていて嬉しかった。
相変わらず とっぽい彼=ルーリーだが、金髪のオーウェン・ウィルソンとつるんでいた。
この手のドキュメンタリーは、
映画界のみならず、政財界各界からのセレブリティが集結する。もうそれだけで画面の煌めきは最高潮である。眼福。
コンセプトは
セレブにオートクチュールを着てもらうことで「ファンたちとファッションを直結に結ぶ」という狙いだ。
ショーはエントランスから始まるのだ。
つまり
メット・ガラの効用は、
モデルのマヌカンが閉じられた空間でランウェイを往復し、業界関係者がそのマヌカンではなく着ている服飾だけに目を凝らした従来のショーのあり方とは異なり
より世俗のものとして
人気者たちのアイテムとしてのファッションに市井の皆を振り向かせた事だろう。
招待客をなんとか500人までに絞ろうと苦心惨憺するプロデューサーのアナ・ウィンター。
メット・ガラは全世界から羨望される巨大イベントになったわけだ。
映像が洗練されておらず、切り貼り多用なため☆減点。
NYのあの美術館メトロポリタンには、はるか昔に行ってみたことがある。
正面から入場し、右翼のゴッホの間には衝撃を受け、地下展示室では穴が開くほど見つめた一生心に残るイタリアの小品に出会った場所だ。
あそこでファッションショーが開催される事の意外性と驚き。
館長は若い。
服飾部門のチーフも熱気でインタビューに答える。
かのアナ・ウィンターの独裁ぶりにはまったく笑ってしまうが、
ダメ出しの連発で萎縮するスタッフ・メンバーが可哀想ではある。
そしてエンドロールでは
「そのアナ・ウィンターの考えが自分には寸分違わず読めるのだ。おんなじ脳を持ってるんだよ、ヒャッホー!」と無邪気にはしゃぐ男性スタッフの浮いた姿。
あの企画、メット・ガラの全てが、”豪女“の仕切りとパーソナリティあってのものなのだと
少ーしだけ毒を匂わせて、
苦労したスタッフたちのために密かに一矢報いたのかな?
この“おまけシーン”を忍ばせて監督がフィルムを閉じているのが面白い。
でも、大仕事を先駆ける人間とは、そういうものだ。