マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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心に残り続ける作品のひとつ
人生に絶望していた時期に観賞した映画です。
派手な演出や鮮やかな物語ではなく、一人の人間の人生の一部分を切り取ったような映画でした。
兄の死がきっかけで主人公に甥が寄り添うようになり絆が生まれ彼の心を癒してくれる様子がたまらなく大好きです。喧嘩も多いですが。
最後の場面、リーがこの街には残れない、辛すぎると言った場面も大好きなシーンのひとつです。
辛い気持ちを持ったまま生きていこうとする主人公に勇気を貰います。私が最も好きな映画です。
心に残り続ける作品のひとつ
【”乗越えられない、辛すぎるんだ。”過去に哀しき過ちを犯した男と、親類縁者との関係性を静かなトーンで描く。隠者の如く生きる哀しき男の姿を丁寧に描くケネス・ロナーガン監督の眼差しに救われる傑作である。】
ー ケイシー・アフレック演ずる無口な主人公リー・チャンドラーが、後半、嗚咽しながら、血を吐くように口にする
”乗越えられない、辛すぎるんだ・・”
このセリフと彼の表情が未だに忘れられない・・。ー
・曇り空の多い街で過去の自らの過ちで犯してしまった、悪夢のような出来事を拭い去る事ができずに、隠者のように生きる男の姿を丁寧に描いている哀切な作品。
・けれど、その男の周囲には、事件の結果別れた妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)、兄ジョー(カイル・チャンドラー)、甥パトリック(ルーカス・ヘッジズ)達が時に寄り添い、時に”遠方”から暖かく見守る姿がある。
・現在、過去を行き来しつつ、物語は哀しいトーンを纏いつつ、静かに進む。
・そして、過去の哀しき場面が後半、劇的に大スクリーンに映し出され、リー・チャンドラーが隠者のように生活する理由が明らかになる・・。
<ケネス・ロナーガン監督が書き下ろした脚本の秀逸さ、
及びそれに応えたケイシー・アフレックを筆頭にした、俳優陣の演技にも魅入られる作品。
傑作である。>
<2017年5月20日 劇場にて鑑賞>
マンチェスターの空はリーの心の色?
ある事がきっかけで心を閉ざした主人公と父親を亡くした甥との物語。
薄曇りのマンチェスターの空がリーの心を表しているようだった。
無表情で口数の少ないリー。でも彼の優しさが垣間見れる。
静かな風景と音楽、そして台詞が続く淡々としたストーリー。
ラストシーン、そしてエンドロールで涙が溢れた。
きっとマンチェスターの雪解けと共にリーの心の扉が開いたに違いない。
壊れた心は、そう簡単に治らない
兄を亡くした弟と、父を亡くした息子。つまり叔父と甥の二人。
「葬儀はいったいどうすれば」の話が進む中、いろんな箇所で回想シーンが挿入されているのが。最初はわかりにくかったんです。
故郷に帰ってきたリーの事を、人々は「あの、リーか?!」と呼ぶところが引っ掛かりました。え、いったい何があったんだろうって。
冒頭から、リーはお客からちょっと言われるとFワードでやり返す、けんかっ早い性格が出ていて。いつものケーシー・アフレックらしいなあと思っていたら。
いくつもの回想シーンで、徐々にその過去が明らかになっていく様が切なかったなあ。心のケアもできぬまま、孤独に生きていたリー。立ち直れるはずもないわ。
甥っ子は微妙な16歳。結構ドライなキャラが今風か。まだ微妙に大人じゃない。リーと一緒に住むのかどうかなど、最後に決めるのは大人。リーの「後は自分で決めろ」のセリフが、決まってました。
タイトル名にもなった場所は、米国のマサチューセッツ州にある町の名前。人口5,000人ほどの小さな港町。港を見るたびに自暴自棄になったリーの気持ちそして、人々の記憶から消えないリーの過去。
ぴったりのロケーションです。
特に悲しい場面で流れるアダージョ?がいい仕事してました。こういう映画音楽も好きです。
そして、最初はマッド・デイモン主演予定がケーシーになったのは。吉だったでしょう。それくらい役がはまっていて、オスカー主演男優賞も納得でした。
どうしようもないこともある
棚に1本置いておきたい映画。
人生って、どうにもならないことってあるよね。心の強さや、周囲の助けがあっても、なんともならないこともある。なんとかなるさ、なんて言える状況じゃない。
ララランドと、ムーンライトのアカデミー賞ラッシュの間に、ポンと主演男優賞を取っていたので、とても気になっていた。
ケイシー・アフレックは、バットマン(ベン・アフレック)の実弟。彼の静かに、言葉少なに語る演技で、最初から最後まで、魅了され続けた。納得の受賞だ。
過去に傷をもち、心を閉ざした主人公のリーが、兄の死をきっかけに街に戻る。唯一の肉親である、兄の息子のパトリックと、葬式などの手続きをしながら交流していくが…。
パトリックのために、自分の過去との葛藤と闘いながら、ひたすらなんとかしようとする姿が、痛々しくてたまらない。自分の生活を壊したくない我儘なパトリックに傷つけられても、唯一の血の繋がりがある甥は、決して捨てられない。
これは、かわいそうとか、そういう域を超えている。
観終わった後に、じんわりと余韻を楽しみたい、久々の良作です。
傷付いた心にそっと寄り添ってくれる映画
彼の悲しみに救われる。
悲しみに散りばめられたおかしみ
かなり気合いを入れて見ないと
かなり気合いを入れて見ないと、最後まで見きれない映画かも。
なぜこの男は、だらしなく野蛮でやさぐれているのか、理解に苦しむ序盤。兄の死もどこか上の空のよう。
その原因は、中盤の回想で明かされるわけで、悲しみと絶望を経て、さらなる悲劇には、溢れるはずの感情も残されていない、といったところか。
甥っ子は自分中心に世界を見る年頃、父の死もめまぐるしい日常の中で流れている。これが現実的な気もする。
全体的に重いし、長々とだるかったりもするわけだが、この映画の主張は強力に響いた。「たえられない」そう言ってしまう、という。乗り越えることができない、という。
裁かれないことの苦しみと映画『怒り』で描かれたこと
極めて重大な過失であるが、法で裁かれるべき過失(過失致死罪?)ではないので、刑務所に収監されるという刑法上の『罪』には問われない。3人の幼い命を奪い、母である妻の心を破壊するという『重罪』を犯したにも関わらず。
これほどの咎を負いながら、身の置き所すら与えられない〝仕打ち〟は想像に絶するほどの責め苦だと思う。刑務所に拘束されながら日々のルーティンに従っていることの方がどれだけ楽か。法の定めたところに従って『贖罪』の機会を与えられることがどれだけ救いとなるのか。
2016年の邦画『怒り』では、様々な登場人物により、取り返しのつかないことへの悔恨や慟哭が、最高レベルの演技力と演出で描かれていました。あの中で、広瀬すずさん演ずる泉ちゃんの悲惨な事件について、結果的に見て見ぬ振りをしてしまった辰哉君は別件で逮捕され、泉ちゃんに関する証言をすれば罪は軽くなるのにしなかった。彼が刑務所で償おうとした罪は、逮捕された事件ではなく、泉ちゃんの心を見殺しにしてしまった取り返しのつかない自分の行動だった。
裁かれないことの苦しみについて、これほどまでに語ってくれた作品は初めてでした。
悲しいけどホッとするとても良い映画
面白い。
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