「can't beat it」マンチェスター・バイ・ザ・シー Oliverさんの映画レビュー(感想・評価)
can't beat it
厳しい潮流に逆らうかのように海辺の町でただひたすらもがき続ける主人公がいる。主人公の経験と哀しみは、安易に想像できない。父の死を乗り越える高校生の甥っ子との対話がある。哀しい主人公と甥の二人を乗せたボートは、ただひたすらゆっくりと海を進んでいく。鬱な主人公と彼の周りに配置された人々に流れる時間の相違が映画のリズムの肝になっていた。人々に無言の応対を続けるケイシーアフレックを見て、時に魔が差したような笑いがこみ上げる時もあった。 死の宣告をしている時に、良い病気ってなんだと医者が聞かれたり、救急隊員が救急車に担架を載せようとするとき中々入らなかったり、悲しい場面に含まれていた苦笑いを誘う細かな演出が主人公を見守る気持ちにさせてくれた。寒々しい景色が続く映画でありながら、不思議なユーモアに包まれた他人の気持ちに寄り添うとても暖かい映画だった。
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