「乗り越えがたい悲しみの話」マンチェスター・バイ・ザ・シー masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
乗り越えがたい悲しみの話
クリックして本文を読む
リーが抱えた悲しみと自責の念は、子どもをもつ親であれば想像に難くないことだと思う。
ああやって生きているだけでもしんどいだろうし、ましてや兄の子どもを毎日見ることになれば、嫌でも思い出してしまう。
きっと急逝した兄は、弟のリーに父親のやり直しをさせようとしたのではないか。
リーはそれを、彼なりのやり方でやり遂げようと努力している。
その努力の始まりとともに、物語はプッツリとエンディングを迎えた。
兄の葬儀を終え、甥のパトリックとのつながりを切ろうとしていない雑談の内容から、二人が肩を並べてボートで釣り糸を垂れるまでのラストシーンが美しい。
最後まで自分が犯してしまった過ちを「乗り越えられない」と言ったままであるにもかかわらず、微かな希望と許しの兆しが感じられる。
凍える海の風景は、本来なら暗く陰鬱に映るのだが、なぜか登場人物たちの悲しみを凍結して封じ込めようとする優しさを感じた。
ケイシー・アフレックは演技派然とした振る舞いがどうしても鼻について好きになれなかったのだが、本作で初めて感情移入して観ることができた。
グレッチェン・モルは自分にとってのセクシークイーンだが、アルコール依存に苦しみながら立ち直ろうとするパトリックの母役を、少ない出番で好演していた。
二度目の結婚相手を演じるマシュー・ブロデリックがチョイ役で出てきたときに、なんだか笑いがこみ上げてきたのはいただけなかったけれど。
コメントする