「かなり難しいテーマへの軽やかな挑戦」世界は今日から君のもの いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
かなり難しいテーマへの軽やかな挑戦
原作があるのかなと調べてみたら監督の書き下ろしのストーリーとのこと。確かに話の展開や演出等々がテレビドラマ的なので、そっち畑の人なのかなと思ったのだが、脚本家とのこと。少々強引な流れが双見えたのかも知れない。
それにしても、着実に実力を付けてきている女優門脇麦の発展がここでも光っていたと思う。実際、監督も門脇を気に入っていて今作品に起用ということなので、この女優のための映画なのだと思う。
テーマとしては、一切誰も触れていないが、『アスペルガー症候群』若しくは、『自閉症スペクトラム障害』の話なのだろう。実際、この手のテーマだと、微妙な線引きが現われてきて社会問題にまで発展しかねない事も起こり、とにかく外野が煩くなる。蓋を開けてみたら『サバゲー』を扱ったシーンに色々問題があったようだが、そんなことより主題のこのナーバスでデリケートな人間の存在ということをもっと着目すべきだと思うのだが。。。とはいえ、確かに周りにこういう人物がいるとまるで腫れ物に触るような態度で接してしまうことが普通なのだろう。だからこそこの人達の他の健常者との違いというものを丁寧に描いている、いや映画の都合上誇張している部分もあるが、その辺りも又、このテーマの奥深さを考えさせられるきっかけになるのかも知れない。
とにかく門脇麦の役に対する真摯な態度、そしてそのまま演じるのではなく、きちんと監督の意図なのか自身の味付けなのか、悲惨にならずにコケティッシュな可愛さを纏っているところに救われている。そう、まるで妖精のような仕草や動きなのだ。この症状は濃淡があるらしく、比較的軽いものとしてのレベルなのだろうし、そうでなければテーマがもっと重くなってしまうからそういう意味では丁度良いさじ加減を保っている作品だ。
幼少期での宝箱の色と大人になってからのスケッチブックの色を同じ黄色にしたり、ビー玉の繋がりをもってきたりと、小ネタもいろいろ散りばめられている細かさも好感が持てる。
最後のハッピーエンドの着地とかも分かるように、少しでもそういう人達と健常者との間に蟠りを排除したいという願いが今作品に込められている、とても優しい映画である。少しずつ、一歩ずつ、自分のペースで薦めていけるダイバーシティな世界を未来は実現してくれるのだろうか?相模原の事件から1年経ち、その悪意に満ちた『優生思想』に凝り固まっている連中をみていると絶望するのだが・・・