劇場公開日 2017年8月18日

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「無機的」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? lak510さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0無機的

2017年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なんだか随分と酷評されてるようなので、逆に気になって見に行った
結論として、これはシャフトがやるべきじゃなかったと思った

シャフトの演出の特徴は、よく言われる「生活感のない謎空間」に代表されるように無機的な部分にある
それ故、世界観がえげつない、登場人物が人というより怪物じみてる作品であれば極めて上手く作る
そう言った作品であれば、特有の無機的な演出によって、容赦のない過酷さが際立つからだ

ところがこの作品、主人公とヒロインを中学生に変えてしまったため、
原作と比べて思春期少年少女の青春恋愛物語というテイストが強くなってしまっている
これがシャフトの無機的な演出と極めて食い合わせが悪い

良かった点としてよく挙げられるのは「ヒロインが可愛い」というものだが、これが間違いを如実に示している
ヒロインを思春期少女、主人公を思春期男子としたいのであれば、求められる演出は無機的ではなく有機的なものだ
ところが無機的であるが故に、彼らの息遣いが聞こえない、体温が感じられない、何を考え、何を想って、何を感じているのかがイマイチ伝わってこない
だから「可愛い」以上の魅力を覚えないのだ
また、背景美術は美しい(人物作画は危うい)が、やはりどこか無機的だ
むせ返るような草木の青臭さが感じられない、画面の中は夏なのに、その暑さが届いて来ず、むしろ寒々しい

シャフトにやらせるのであれば、ヒロインは「可愛い」ではなく「美しい」(手前に「人形のように」が付けばなお良い)であるべきだった
そして青春劇テイストは控え、SF的要素にもっと重きを置くべきだっただろう
この辺り、やはりプロデュース側が、去年の「君の名は」での成功に引き摺られた感が否めない
かの作品はSF要素、ディザスタームービー要素を含みつつも、青春恋愛劇に重点を置き、主人公とヒロインの心の動きを有機的かつ丁寧に表現していた
その夢よ再びとばかりに、無機的な演出を得意とするシャフトに、無理に有機的な演出が必要な作品を作らせてしまった、と言ったところか

シャフトが批判されているのを見ると、些か気の毒にさえ思える

lak510