「2016年制作の時代に即したUp-to-dateな被差別者主体の映画だが、今見るとありきたりとも思える」ムーンライト Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
2016年制作の時代に即したUp-to-dateな被差別者主体の映画だが、今見るとありきたりとも思える
バリー・ジェンキンス監督による2016年製作のアメリカ映画。
原題:Moonlight、配給:ファントム・フィルム。
筋肉もりもりの黒人男性トレバンテ・ローズが、あの弱そうなリトルの大人になった姿であることを理解するのに少々時間を要した。そのマッチョな彼が、ずっと一途に学生時代の友
人に想いを抱いている純情さのギャップが、なかなかのインパクト有り。
ゲイでいじめられっ子の黒人学生が、いじめっ子に意を決して教室で椅子を振り上げて暴力を振うシーンに、一瞬カタルシスを覚えた。しかし、その結果として犯罪人となり、その後麻薬売人になってしまうというのが、マイアミ黒人社会の救いの無さを示している様で悲しかった。
自伝的要素も強いらしいが、原作者タレル・アルビン・マクレイニーは1980年生まれのマイアミ出身の黒人で、名門イェール大学卒で、劇作家として活躍により2013年にマッカーサー基金「天才賞」奨学金受給とか。仕事的には、この事実に近いとこで物語にして欲しかった気もした。
2016年製作ということを考えると、時代に即したUp-to-dateな被差別者主体の映画であったということは理解出来きるし、結果的にアカデミー作品賞までゲットした製作総指揮ブラッド・ピットらの目の付け所に感心させられた。ただ、今の時点で見ると、インテリ受けを狙ったありきたりの映画の様に自分は感じてしまった。
とは言え、麻薬に溺れた母ナオミ・ハリスの愛情を知らずに育った主人公、彼の少年時代を演じたアレックス・ヒバートの全ての人間に不信感を持った様な目つき、その彼と息子の様に接する麻薬売人マハーシャラ・ハリの大らかさ・優しさを見せる演技は、かなり心に突き刺さった。
製作アデル・ロマンスキー 、デデ・ガードナー 、ジェレミー・クライナー。製作総指揮ブラッド・ピット、サラ・エスバーグ、タレル・アルビン・マクレイニー。
原案タレル・アルビン・マクレイニー 未発表脚本「In Moonlight Black Boys Look Blue」、脚本バリー・ジェンキンス。
撮影ジェームズ・ラクストン、美術ハンナ・ビークラー、衣装キャロライン・エスリン=シェイファー、編集ナット・サンダース、ジョイ・マクミロン、音楽ニコラス・ブリテル。
出演トレバンテ・ローズ(シャロン(ブラック))、アンドレ・ホランド(ケヴィン)、
ジャネール・モネ(イテレサ)、アシュトン・サンダース(10代のシャロン)、
ジャレル・ジェローム(10代のケヴィン)、アレックス・ヒバート(シャロン(リトル))、マハーシャラ・アリ(フアン)、ナオミ・ハリス(ポーラ、007 スカイフォール等)。