「ムーンライトの意味、そしてラストシーンの意味」ムーンライト あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ムーンライトの意味、そしてラストシーンの意味
黒人社会特有の物語?
LGBT特有の話?
どちらにしてもアメリカのお話?
そんなことはありません
全くもって人種も国も問わない、普遍的な物語です
全員白人で配役しても成り立つのです
誰一人黒人が出てこなくても成り立つのです
日本に舞台を移して、全員日本人の俳優だけで日本映画として撮っても、やっぱり成り立つのです
ヤクの売人は日本映画ならヤクザの兄貴で簡単に翻案できます
特殊な世界
特殊な社会
特殊な人達
そんな映画だ、自分には関係ない
そう感じたとき、あなたのその視線には差別の眼差しが宿っているのかも知れません
それを監督は意図して徹底的に黒人だけで撮影しています
公立校なのだから、生徒にも先生にも白人がいるはずです
なのに誰一人いません
そして地名はアトランタと地元がマイアミらしいとぐらいしかなく、時代も現代というだけでいつというものも徹底的に省かれています
昔、昔、あるところに、というのと同じ様に
どこかの、どこかの時代の、どこでもないところ
そういう映画であろうと意図して徹底していると思います
月の光に照らされて美しく黒い肌は青く光ります
誰にも平等に公平に月の光は降り注ぐのです
月は自らは光らない
太陽の光を反射しているだけ
私達の視線は平等に公平に相手を照らしているのでしょうか?
自ら差別されるべきようなことを、視線の先の相手はなにもしていなくても、私達自身が発する視線に差別の光があれば、それが反射されて相手の姿が差別するべき人間に見えているのではないでしょうか?
それがムーンライトの意味なのだと思います
だだの黒人の子供じゃないか
それは美しく月の光に輝く肌がそのようにしか見えないという証拠です
あなたには青く美しく目に映っていますか?
それがラストシーンの意味なのだと思います
アカデミー賞を穫るのは当然のことです
劇中のCDジュークボックスでかかる「ハローストレンジャー」
心に染み入りました
歌っているのはバーバラ・ルイスという黒人歌手
相当コアな黒人音楽のマニアでないと名前も知らない存在だと思います
自分も本作で知りました
調べてみると1943年生まれで日本でいうと加賀まりこや梓みちよと同い年です
この曲は1963年のヒット曲で、ブラックチャートで1位を2週間維持、ポップチャートでも3位というのですから大ヒット曲です
なのでカバーも1966年、1973年、1975年、1977年、1985年、2004年と幾つも発売されていて有名歌手が歌ってヒットしたものもあります
バリー・ジェンキンス監督は1979年生まれなので、2004年バージョンでこの曲を知ってオリジナルを使ったのではないかと思います
これだけのヒット曲ですから過去ヒット曲のコンピCDも配信も幾つもありますから手軽にまた聴くことができます
何度も繰り返し聴きたくなる名曲です