「ブルーが浮かぶ海のシーン」ムーンライト 字幕 アンゼたかしさんの映画レビュー(感想・評価)
ブルーが浮かぶ海のシーン
滲み出す様に映画を彩る色彩は、ぼんやり月明かりに照らされる肌の色、はっきりと浮かび上がるシーツや照明のブルーが特に際立っていて美しかった。
この映画は意図的に黒人の肌の色を美しく見せるため、色調を調整してると聞いてその通りに効果が効いていると同時に馴染んでもいるなあと思った。
八方ふさがりのリトルの人生を、海辺へ連れて行きお前も泳げると背中を押してくれた存在フアンも凄く印象的だったし、子供たちが夜の海辺ではしゃぐシーンももちろん。海のシーンがじんわりと浮かび上がる様なそんな素敵な作品でした。
二部の海のシーン、こみ上げる想いを押し込め、「お前も泣くのか」に対しシャロンの「泣きすぎて自分が水になりそう」なんて言葉の紡ぎ方がロマンチックで、好きな人にはこういう一面を見せるんだなあなんて、あの夜のさざ波と2人を照らし出す月の青光りが永遠に続いているような儚い一瞬。
後日、いじめっ子に指名されてあろうことかあの夜過ごした相手に殴られる。仕返しして捕り車に押し込められるシャロンを見るケヴィン。胸がキュッとした。
大人になりフアンのように育った筋肉隆々のドラッグディーラー、シャロンだけどケヴィンとの再会で幼少期のリトルの様に無口に戻りああ見た目は完全に別人だけど中身はリトルのシャロンなんだなって。
ケヴィンの、「ある曲を聴いてお前に似た人を見て思い出したから電話してみたんだ、こっちに来たら美味い飯作るから来いよ。」なんてよく考えなくてもロマンチックにも程がある。
ずっとこれはなんだろうという気分だったけどああ、これはラブストーリーでもあったんだなってやっと気付ける様な2人の距離感。そしてその曲を流して内容が「ハローストレンジャー」の愛する人への曲。思い浮かぶのは、幼少期の2人の会話。
ケヴィンの家に行くも、相手の距離感を伺いながら少し強張った表情で、でもそこにはあの永遠に続く夜の海で内緒の一瞬を過ごした2人が戻って来たんだよね。きっとこの後2人は結ばれるんだろうけど結末は教えないまま。
最後の誰かに呼ばれた様に振り返る月明かりのブルーに照らされたリトルも、あれはフアンにブルーと呼ばれて振り返ったのかな。と考えつつエンドロールが短すぎてもっと余韻に浸っていたかったなあとも思えた。
この映画がオスカーに選ばれたのが心から喜ばしい。世界は本当に変わって来ているんだ。