「観客の「映画」に対する概念によって」散歩する侵略者 てきとう備忘録さんの映画レビュー(感想・評価)
観客の「映画」に対する概念によって
星の数が変わりそうな作品。
PV以外予備知識なしの鑑賞で、もしや…と調べて舞台原作と知りました。
映画化ってどうしても視覚的な背景のリアリティが増してしまう結果、感覚的に求められるリアリティも増しがちなところがあるので、脳内補完で済んでいた部分の具現化に違和感を覚える人もいるんだろうなあとは思います。
そういう舞台的で含みのある台詞回しや場面転換なども、映画的な表現があいまっていい意味で奇妙な感覚を味わえたところは個人的に良かったと思います。
ただ「奪われた」前後の行動に滲むメッセージを細々拾っていく中で、侵略者たちが欲しがる「概念」に、雁字搦めになっている人類のある種の不自由をジワジワ感じられる過程は面白いのですが、大衆的な意味でも興味をひく愛という普遍的なテーマに着地する作品なので、せっかく映画にするならばもう少し登場人物たちの心の流れを自然に分かりやすくして欲しかった。
舞台的であるあまりに人類側の行動原理が侵略者たちより理解しにくい箇所がいくつもいくつもあったので、どうにも言動がちぐはくで感情移入はしにくかったです。
(あえて、という気もするけど)
あとはセクハラ上司がま〜…ベタでした。笑
これは舞台がどうとかじゃなくて邦画あるあるかな。
とはいえ役者さんたちのハマった演技、個人的に期待大だった「異分子が人間社会に溶け込むまでのぎこちなさ萌え」や、最後まで展開が読めないドキドキ感、監督独特の奇妙な空気感や笑いどころは充分楽しめたので、人は選びますがおすすめできる映画です。
あれこれ言った後に舞台も観劇したくなる、という意味では映画化成功なんではないでしょうか。