劇場公開日 2017年10月7日

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「第2作ビヨンドがピークだった」アウトレイジ 最終章 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5第2作ビヨンドがピークだった

2017年10月15日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

2010 年公開の「アウトレイジ」は,2年後続編の「アウトレイジ・ビヨンド」という傑作を生んだ。本作はさらにその5年後に作られた第3作である。たけし作品で続編構成になっているのはこのシリーズのみである。これまで同様に過激な暴力や殺人シーンがあるため,R15+(15 歳未満は親と同伴でも鑑賞禁止)に指定されている。登場人物についての説明が一切ないので,前2作を見ておくのが必須である。

初作は東京の山王会というヤクザ組織の内部抗争に過ぎなかった話が,第2作では大阪の花菱会が登場し,第3作の今作では半島マフィアまで登場して世界が徐々に広がっている。「どうやって人を殺そうかというプロセスを先に考え出し、それに対しストーリーを後付けした」とたけしが語っているように,元々続編の作成が想定されていなかったが,第2作は第1作の結末を上手く伏線として使って見事な作品に仕上がっていた。

バイオレンスシーンのアイデアも非常に豊富で,初作での歯医者の道具を使ったり,厨房の道具を使ったりした暴力シーンなどはトラウマになりそうなほどであったが,作を重ねるたびに新鮮味が薄れて来たし,オトシマエをつけるための金額も最初は 100 万円程度だったのに,次第に膨れ上がって,今作では遂に億のオーダーにまで高騰した。こうしたインフラ傾向はシリーズ化した場合の付き物のようなもので,ドラゴンボールなどと同じ経緯である。

初作と第2作が2年しか間がなかったのに対し,今作は5年の時間経過がある。この間に花菱会の会長役だった神山繁が物故しており,今作では苦肉の策での設定変更が見られたほか,花菱会の重鎮役であった西田敏行も塩見三省もやつれ方が半端なく,主要キャストの加齢がこれ以上の継続を困難にしたのではと思われた。その同じことは,主役を演じたたけし本人にも当てはまっていた。

たけし作品に出演することは日本の俳優の憧れだそうで,CM 等でかなり良く知られた俳優が使いっ走りや鉄砲玉役だったりして驚かされるのだが,そうした一流の役者を揃えた中ではたけしの滑舌の悪さと演技の一本調子ぶりが浮きまくってしまうのが残念であった。語尾に必ず「この野郎」か「馬鹿野郎」がつく台詞ばかりを怒鳴りまくっているだけなのだから,一本調子になることは避けられない。

本シリーズにおいて,たけしが演じる大友だけが任侠と呼べるほどの古風なヤクザで,他のは現代的で利己的な暴力団員という描き方のようなのだが,それが描き切れていないために大友の行動原理がわからなくなってしまっているのも残念な点であった。ヤクザも暴力団員も金にならないことはしないという鉄則があり,金にもならないことに命を捨てたがる暴走族や学生運動の活動家などとは違うという認識があるので,シマも子分も要らないという大友の行動は,私には不気味な革命家のように見えて仕方がなかった。

前作までは,大友の独自の仁義に反した者だけを容赦なく殺すのかと思っていたが,本作の大友は,まるでゴルゴ 13 と化してしまったかのようであり,誰を殺して誰を殺さないのかという境目が見えなくなってしまったのも残念であった。また,登場シーンの少なさや優先度の低さも気になった。本作だけを見た場合には,主役は西田敏行に見えてしまうのではないかと思えるほどであった。

音楽は全3作とも同じ人で,映画の雰囲気を邪魔してはいなかったが,個人的には必ずしも相応しいとは思えなかった。総合的にみて,第2作の面白さがピークで,今作はワーグナーの「神々の黄昏」のようにワケワカの決着を着けただけのように思えてしまった。今作での演出で一つだけ気に入ったのは,首だけ出して車道に埋めるというリンチ法で,東名高速道で後続車を停止させ,大型車に追突させて2人を殺害したクソ野郎を同じ目に遭わせてやりたいと思った。
(映像5+脚本3+役者4+音楽2+演出3)= 68 点。

アラ古希