「殺意は誰でも持つもの」ユリゴコロ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
殺意は誰でも持つもの
ストーリーの本筋はなかなか面白いのに、演出や描写でかなり損をしている作品だと思った。
ベタなライトアップや色調、映像の作り方は好きなんだけど演技指導がいけないのかやたら古臭くちゃちな印象が全編通して抜けない。
説明的すぎるセリフにも辟易とする。
ノートを読み進める松坂桃李がワナワナしたり白目向いて「コロシタイ…」と呟くシーンはギャグにしか思えなくて不謹慎ながら笑いが堪えられなかった。
殺人鬼の血が流れてるからこんなに殺したくなるんだー!って純粋おぼっちゃまかよ!
殺意なんて誰でも持つことあるもんだって、結婚するような歳になるまで分からないものかな。
まあいきなり自分の母親が何人も殺してるようだって知っちゃったら混乱するのも当たり前っちゃ当たり前なんだけども。
時代遅れ&テンプレすぎるヤクザ像にも笑えるし、何より、複数を殺してきた女とはいえ 普通のおばさんである木村多江演じる細谷さんがプロ探偵並みに調査力高いのにも力が抜ける。
というか亮介くん、細谷さんにキレたり車で爆走する前に自分で調べる努力をしようよ…自分の婚約者なんだからさ…
現在パートになかなか入り込めないぶん、殺人者美紗子の独白と共に送られる過去パートはわりと好き。
なんだけど殺人シーンのあまりのお粗末さにはガッカリしてしまう。
テレ朝のサスペンスでよくある、「えっ、こんな簡単に人って死んじゃうか!?」の連続なのである…
話の流れは好きなんだけどね。
佐津川愛美が リスカ大好きメンヘラ女子を見事に自然に可愛くほの暗く演じていてとても良かった。
いつも脇役だし存在感あるわりに注目度が低い気がするんだけど、彼女を見るたびにその演技力と順応性の高さに惹きつけられる。
なんとなく予想のつくラストはベタな回想とともにかなり駆け足に進み、感動的に仕上げたいんだろうけど心に刺さるものは何一つ無い。
奇跡に近い偶然がいくつも重なるのもなんだか萎えてしまうかな。
いくら本当の愛を知ろうと子供の為に行動しようと殺人の罪は消えないし、自首して罪を償うより整形して一般社会で生きることを選んでる時点で同情の余地なし。
くっつき虫や逆さミルク飲み人形、穴に落ちる虫や滴る血液など映像的に好きなものは多いし、
心のユリゴコロとして殺人を選ぶ美紗子には興味が湧くけれどイマイチのめり込めず粗が気になって仕方がなかったのが残念。
一体誰目線で観ればいいのかわからない映画だった。
監督が若い青春映画を多く撮ってる人だったのでベタな演出やちゃちな演技に少し納得…