劇場公開日 2017年2月18日

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息の跡のレビュー・感想・評価

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3.0「気配」の不思議。

2023年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ひどく不思議な記録映画。ひとことで言えば、映画という形態には不可欠と信じられてきた「物語」をどれくらいオープンにできるか、ナラティブ構造をどれほど解体できるか、をめざして作られた作品。

ここでみる陸前高田は、たとえばNHKを筆頭に日本のTV局で数限りなくつくられてきた「震災ドキュメンタリー」の類とは、まったく似ても似つかない姿として差し出される。性急なまとめ・解釈を考えるより前に、その土地の気配を愚直に記録しようとする。

その「記録」の中には、記録者である作り手の存在も含まれている。観客は作り手と一緒に、震災後の被災地の空気を生きる。これが現代ドキュメンタリー映画の最前線につらなる感覚と手法であるのは間違いない。

同時に、その「見る側に解放されたナラティブ」をつくる試みが、あまりに曖昧で茫漠として見えかねないことも、作り手側は分かっているだろうと思う。

主人公の、ときとして真偽定かでない雄弁は、いったい何なのか。あの震災は、被災地で暮らす人々にとって何だったのか。作り手がその答えの一端に、ある確信をもってたどりついていないかぎり、映像が軸を失ってしまうことは避けようがない。

そうした確信があってつくられた映像と、そんな確信はないまま自分でもこれは何だろうといぶかしがりながら作られる映像とは、やはり別のものなのだ。

ただ、やはり人生をかけて土地の人々のそばに立つ記録者が、時としてみごとなショットを呼び込んでいることは確か。水滴にまみれたレンズがとらえた、雪の中の獅子舞の人々。白鳥たちに餌を投げる主人公。忘れがたいシーンは数多い。土地の気配を、物語にならないまま、気配として共有することのできる希有な作品と言うべきか。

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milou

3.5バイタリティあるたね屋の佐藤さん

2021年5月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

東日本大震災の津波で陸前高田に有った住宅兼店舗を流されてしまった佐藤貞一さんは自力でプレハブを建て、種苗店の営業を再開した。看板も手書き、仕事道具も手作りで、水は空き缶で手掘りした井戸から手押しポンプで汲みあげている。
また、自身の被災体験を英語でつづった本を自費出版し、続いて中国語やスペイン語での執筆にも挑戦。
さらに、地域の津波被害の歴史を調べ、過去の文献に書かれた内容が正しいものなのかを検証している。
すごいバイタリティの有る人だと思った。
小森はるか監督も良い人を見つけて映像に残したなと感心した。

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りあの

3.5頭が下がる

2019年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

陸前高田の種苗店の店主、佐藤貞一さんが東日本大震災の津波で流されたあと、自力で再建、営業を再開すると共に、英語でブログを発信する。
これだけのエネルギーを見せられると、人類の可能性を信じたくなる。

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いやよセブン

3.0息の跡とは、生きた跡かなと。

2017年4月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

佐藤は東北の太平洋岸、被災地には多い名前です。陸前高田の佐藤貞一さん、タネ屋の佐藤さんの事はこの映画を見るまでは全く知りませんでした。
実は山口県光市も陸前高田と同じく白砂青松の松並木と砂浜海岸で有名で、今年の5月には陸前高田に松の植樹ボランティアツアーが行われます。
あれからもう、6年。被災日はまだ6年。この映画を見ると佐藤さんという方の、それは多分にして東北人気質の公約数的なイメージですが、朴訥で芯があり、宮沢賢治的に理想的で、雨にも津波にも決して負けず怒らず、その人柄が画面からよく伝わりました。
スペインにしか17世紀初頭の被害状況を書いた記録がない事、ご神木との関係から導かられ仮説、しかしご神木はご神木だという感覚。
およそ東京オリンピックに向けて動き出している首都圏とは違う時間の流れがある。
でも、やはり人なんです。人が人を惹きつけ、人を感動させる。
高台には新しくできた佐藤さんのタネ屋があるそうです。ぜひ行って見たい。

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アツサミー

3.5東日本大震災で、陸前高田で被災しながらも、タネ屋を再開し、その体験...

2017年4月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

東日本大震災で、陸前高田で被災しながらも、タネ屋を再開し、その体験を英語や中国語で出版した人がいたとは驚きであった。津波や地震などの映像はなく、主人公の語りを中心に淡々と時間が流れていく。これまでも、津波の被害のたびに記録がなくなる。だから、外国語で記録を残すのだと言う。はたして、その試みは成功するか。

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still_ontheroad

4.0小森

2017年3月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

タネ屋のおじちゃんが時々監督にレスポンスを求める。話相手が欲しいのが、よく分かる。伝わった?分かる?知ってる?監督はそれに応えたり、応えなかったり。たまに応える時のタメ口が素晴らしい。入り込む感じでも、見つめる感じでもなくて、私が撮りたい瞬間が訪れるのを待ってる感じ。田舎で若い女性の監督が、で片付けるにはあまりに豊かで、あと1時間観ていられる。曖昧にしたくなかったから、英語で書いたっていう佐藤さんの鋭さに突かれる。

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ssspkk

5.0小川紳介、佐藤真、小森はるか

2017年2月18日
Androidアプリから投稿

 被写体の佐藤さんが持つおおらかさ、小森監督の武装解除を誘う雰囲気から、張り詰めた悲壮さではなく、親密さも漂う風通しのよさが映画に横溢する。ところが最終盤、立ち退きを求められて"たね屋"を取り壊す際の佐藤さんはそれまでとあまりに違う。自ら掘り当て、生業のたねに撒くための水を汲み上げた井戸を壊し、「終わりだ」と呟く佐藤さんの厳とした存在。希望の種を撒く佐藤さんと、たね屋を取り壊す佐藤さん。まるで神話ではないか。

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花火