ビニー 信じる男のレビュー・感想・評価
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拳闘の為なら死ねる! 激アツな物語に反して映画の温度は低め。
実在のボクサー、ビニー・パジェンサが起こした奇跡の復活劇を描いた、実話を基にしたボクシング映画。
主人公ビニー・パジェンサを演じるのは『ダイバージェント』シリーズや『セッション』のマイルズ・テラー。
ビニーのトレーナー、ケビン・ルーニーを演じるのは『幸せのレシピ』『ダークナイト』のアーロン・エッカート。
製作総指揮を務めるのは『シャッター アイランド』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の、巨匠マーティン・スコセッシ。
以前からスタローンに顔が似ているー!と思っていたマイルズ・テラーくん。そしたらまさかのボクサー役。絶対顔で選ばれただろこれ。
正直ちょっとナヨナヨっとしている雰囲気の役者さんなので、ボクシングの世界チャンプにはどうしても見えない。ブーメランパンツ一丁になった時に披露された、鍛え上げられた肉体美は見事だったけど。
主人公のビニーはイタリア系アメリカ人。
結構テンプレ的な描き方で、とにかくパスタを食ってるし、ファミリーが大大大好き。それにしても、本当にスコセッシはイタリア系アメリカ人大好きなのね。
傍若無人な世界チャンプが、予期せぬ事故により再起不能の大怪我を負う。失意のどん底にある主人公が、ボクシングへの情熱を思い出して心を燃やし、地獄のリハビリの末ついにカムバックを果たす!この設定を嫌いな人っているのか!?というくらい王道のボクシング映画。
これが実話を元にしているというのだから凄い。ビニー・パジェンサというボクサーのことは、この映画を観て初めて知ったのだが、世間的な知名度ってどのくらいある人なんだろうか?ボクシングファンならみんな知っているのかな?
激アツ展開な物語なのだが、反面作風は結構クール。
これが意図的なのかどうなのかは知らんが、正直上手く盛り上げられていない気がする。
例えば、重傷を負ったビニーがベンチプレスを使ってトレーニングを再開するシーン。
折角重りを一つもつけていないただのバーだけでも精一杯、っていう描写を映し出しているのだから、ビニーが徐々に体力を取り戻して行っていることを、重りの重さが増えていく事で表現するとか、そういうのが欲しかった。結構淡々とカムバック劇が進んでいってしまって拍子抜け。
なんというか、全体的に凄く優等生な映画ではあるのだが、そのせいで再現VTRを観ているような錯覚を起こしてしまうこともしばしば…。
ボクシングの試合描写もけっこうおざなり。
本作はボクサーの物語であってボクシングの物語ではないので、あえてそこに重点を置かなかったのかもしれないが、やはり『ロッキー』や『クリード』のような、熱いボクシング・バトルが一箇所でも観たかった。
文句ばっかり言っているけど、やっぱり王道を征くボクサー復活劇には感動してしまう。
「諦めるのは簡単すぎるから恐ろしい」とか、「物事は単純じゃない、という言葉はウソ。物事は単純なんだ」とか、人生に活かせる箴言が盛りだくさん。
実話ベースだからこそ物語に説得力があり、身につまされる思いになる。
かつてはマイク・タイソンのトレーナーも務めていた、名伯楽ケヴィンとビニーの、ほとんどBLな関係は超微笑ましい。
2人で地下室でいちゃついているところを、お父さんに見つかってしまう場面。ケヴィンが何も言わずにそっと地下室から退室するところが、まるで高校生カップルの情事のようで凄く可笑しかった🤣
もっとこの2人の関係を掘り下げることも出来たと思うので、その点は残念。
原題は『Bleed for This(この為に死ぬ)』。
まさに命懸けな狂気のカムバック劇。やはりボクシング映画は面白い!
※映画冒頭でビニーを破ったR.メイウェザーさん。
この人実は「金の亡者」にして常勝無敗、5階級制覇の怪物フロイド・メイウェザー・ジュニアの叔父さん。メイウェザーのトレーナーを長い間務めていたらしい。へー。
タイトルなし
首を骨折したボクサーが再起しチャンピオンになる史実。復活までの血が滲む練習、苦しさが描かれず残念。トレーナーのハゲデブ、アーロン・エッカートが好演、父親キアラン・ハインズは濃い。
ゾウさんが好きなのかな?
タイトル戦で完敗し、もう3連敗となったビニー・パジェンサ(マイルズ・テラー)は引退勧告を受ける。それでも新しくケビン・ルーニー(アーロン・エッカート)をトレーナーとして迎え入れ、ライト級から動きがベストの状態であるジュニアミドル級へと2階級上げる。最初の戦いは前日にカジノで遊んでいたからだろうと単純に観ていたのですが、やっぱり自惚れ屋さんだったのですね。それでも映画を観る限りでは人が良さそうな感じでした。
階級を上げた方が調子が良いなんてのも、しっくり来て、飲んだくれだが見る目のあるケビン。トレーニングを積み、タイトル戦も決まり、見事ジュニアミドル級のチャンピオンになったビニー。愛車のポルシェに加えて新車フェラーリ(?)を購入して試運転。ここであらすじをすっかり忘れていたため、正面衝突の事故の瞬間に体が飛び上がるほどビックリした。チャンピオンになったから終わりってわけじゃないもんね。そしてビニーは首を折る重傷。医師からは二度と歩けなくなるかもしれないと宣告される。ビニーはハローという脊椎固定手術を受け、半年間も頭の周りに金属の装具をつけて過ごすことになるのだ。
気性の荒い父アンジェロ(キアラン・ハインズ)と心配性の母ルイーズ(ケイティ・セイガル)、そして兄妹たちと穏やかな生活を送り、ベッドの上で横たわるだけの命の使い方に疑問を持つビニー。こっそり夜中に起き出して、地下室でトレーニングを開始する。ある晩、ケビンが夕食に訪れ、夜中のトレーニングに気付く。「そんなトレーニングじゃダメだ」。
まさしく奇跡のカムバック、驚異の実話。重傷を負ったビニーとの対戦相手はなかなか見つからないし、スパーリングだって皆敬遠する中、トレーニングシーンをビデオに撮っておいたためテレビも利用して復活劇をアピールするビニーとケビン。もう一つ階級を上げてスーパーミドル級のタイトルマッチが組まれたのだ。この試合がまた12ラウンドフルの凄まじい激闘。最後には『ロッキー』のように判定に持ち込まれるのだが、判定が出るまで手に汗握る緊迫感。久しぶりに良質のボクシング映画を魅せてもらい満足しました。
〈2017年9月映画館にて〉
単純がいい。
またもやマイルズ・テラーが事故で血まみれになる映画なのだが、
どうして彼はこういう役が似合うんだろう!ホントに巧い役作り。
ララランド蹴って大正解よ(ゴメン監督)と思えるほどの出来栄え
に「ロッキー」大好きオバサン(私で~す)の血が騒ぐ。ボクシング
ってそもそも単純だからいいんじゃないのかい?と私もそう思う。
エンドで本人が言う台詞に頷いた。確かに私の息子が彼なら死ぬ
ほど辞めて欲しいと祈るだろう。大きな怪我をしてやっと治って
あとは穏やかに長生きしてくれと親なら絶対願う。心配で心配で
試合中継を見れないお母さんの気持ちが痛いほど分かる。だけど!
息子はボクシングがなけりゃ生きられない。どうしてもやりたい。
だから嘘をついてまでトレーニングを開始する。あぁ単純!他に
何があるってんだよという心意気が素晴らしい。四の五の言わず、
文句をたれず、ひたすら治して戦うっていう信心で手術も拒否し、
周囲の心配をよそに復帰を目指すビニー。だってやりたいんだよ!
あぁそうだろうとも!とトレーナーも彼に従う羽目になるのだが、
その後の復帰戦でチャンピオンに返り咲いてしまうところが凄い。
首を骨折した男が頭にパンチ食らう仕事に戻る。死んでもいいと
思う仕事に賭けたのは、彼がギャンブル好きだったのもあるかも
しれないがそれにしたって勝敗が全てだ。疑惑の判定に四の五の
言わなかった村田諒太のように、彼らには結果を受け入れる度量
が備わっているんだろうか。金に目がない汚いプロモーターなど
裏事情もしっかり描かれてナイスだったが、マイルズ以外皆さん
よく似ていたところに感動。ご本人はかなり軽やかな印象だった。
全体的には楽しめた
元になった話を知らなかった。けれど、かなり脚色している雰囲気は伝わってくる。決してそれが悪いわけではなく、事実前半はそれら演出が非常に効果的に思えたわけだが、後半になるにつれて「本当のところはどうなのよ」という欲求が芽生えてきて、真実味のない話を受け入れがたく感じてしまう。
確かに実際のニュース映像をたくさん絡めて、必死にリアリティーを作り出そうとしていたけれど、マイルズ・テラーが何となくビニーとして捉えることができず─実際のビニーを知らなかったのだけれど…─しかも、なぜかビニーの実際の映像は本編中ほとんど出てこなかったし、それがちょっとしたフラストレーションにつながった、構成が実映像と絡んでいただけに…。
後になって、マイルズはビニーに全く似ていないと分かって、実映像を絡ませることができなかったことも納得でき、この相違を埋めるための苦肉の策が古いビデオ映像の演出だったのかと勝手に判断した。似てなくてもいいけど、あまりにも違っているような気がした。ボクシングに詳しい人にとってこの作品はどう映るのだろう。まぁ面白ければいいのかもしれないが─。
話そのもは面白いし、脊椎固定器具のハローなるものの絵力が物凄くて、ハローが絡むあらゆる演出に興味をそそられた。それがあまりに強烈で、ボクシングそのものを食ってしまっていた。メインであるはずのラストの試合のシーンなどはなくても良かったのではと思ってしまうほど。血とこぶまみれのマイルズの顔があまりにはまっていたため、どうにもチャンピオンには見えなくて、最後の判定も疑惑のようにも感じてしまった。それもひっくるめてのボクシングだということだったのか─。
痛
ホントの話なんだね…それが何より信じられない。
本編終了後に、当時のご本人の映像が流れる。大口を叩くボクサーは数々いれど、こんな大風呂敷を実現させたボクサーは居ないと思う。
感動とか、感激のレベルじゃない。
見終わった後にあんぐり…開いた口が塞がらない。呆然とした感じで、何かにあてられたような錯覚がある。
作品の中で流れる時間の切り取り方が抜群に上手かった。伸びない髪はご愛嬌。
苦悩と努力と…何より葛藤と。
それでも、一歩踏み出した後は、重い荷物を降ろしたような解放感があった。
大ラスのリングでは、いつ首の爆弾が破裂するのかハラハラ。
まさかチャンピオンになるとは!
…なんちゅう男だ。
ドラマの様な物語を体現した男の話だった。
主役の痛みの表現に脱帽。
見てるこっちまでむず痒くなった。
総体的に静かなBGMだったけど、物語をぐっと盛り上げてくれてた。
マイルズ・テラーだけじゃなく、アーロンの肉体改造
「ラ・ラ・ランド」(2017)のデミアン・チャゼル監督が注目されるキッカケとなった「セッション」(2014/原題: Whiplash)で、青年ジャズドラマーを演じたマイルズ・テラーが主演。
マイルズ・テラーは、その「セッション」でもトラックにぶつかったが、またもや自動車事故で血だらけになる映画である・・・(笑)。おもわず茶化してしまったが、それは本質ではなく、実在するボクサー、"ビニ―・パジェンザ"(現在54歳)を描いた作品だ。
"ビニ―・パジェンザ"は、世界チャンピオンを獲得した直後に、自動車事故に遭う。首を骨折する瀕死の重傷を負い、選手生命の終わりを告げられたが、そこから奇跡の復活をとげ、王座奪還する。まさに"事実は小説よりも奇なり"を、驚異の精神力と努力でなしとげた偉大なボクサーの話である。
ボクシング映画の多くが、"ドラマティックな勝利や復活劇"を描くわけだが、これは実話なので、完全なリアリティ描写こそが映画の生命線となる。
ハリウッド俳優が徹底的な役づくりをするのは、もはや当然であるが(レベルが上がって俳優は大変)、マイルズ・テラーの肉体改造も相当なもの。さらに自動車事故のシーンや、その後の治療の経過とトレーニングの姿の痛々しさはすさまじい。
また、ビニーにとってはトレーナーであるケビン・ルーニーの存在も大きい。ケビンは、マイク・タイソンを世界チャンピオンに導いた人物として有名だが、本作では「ハドソン川の奇跡」で副機長役を務めたアーロン・エッカートが演じている。これが一瞬、アーロン・エッカートに見えない。なんと、酒浸りの自堕落なトレーナーである本人に近づけるために18㎏も増量しているのだ。マイルズ・テラーだけでなく、こちらも見どころ。
エンドロールで実際のパジェンザの映像が流れる。パジェンザはマイルズ・テラーとは似ても似つかない顔立ち・風貌なのだが、インタビューでのセリフや、声色(イントネーション)まで似せていたことに驚く。
リアリティ追求の感動を楽しめる作品である。
(2017/7/23 /TOHOシネマズシャンテ/シネスコ/字幕:林完治)
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