午後8時の訪問者のレビュー・感想・評価
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消化不良感は残る。心を痛めた医師の、悲壮な葛藤。
【賛否両論チェック】 賛:自らのせいで少女が死んでしまった医師が、自責の念から調査を進め、やがて当日の真相へと辿り着いていく様が、静かな中にも緊迫感のある描写で描かれていく。 否:展開はただただ淡々と進むだけなので、眠くなりそう。終わり方もかなりの消化不良感がある。 自分が応答を拒んだがために、結果的に命を落としてしまった少女。そのことに深く心を痛めた主人公の医師が、自分の足でその夜の真実に迫っていく様子が、サスペンス特有の緊張感と共に描かれていくのが印象的です。 ただ一方で、その展開はかなり単調というか一本調子で、観ていて思わず眠くなってしまいそうでもあります。終わり方もかなり消化不良で、 「・・・えっ、そんな感じ?」 と思ってしまうかも知れません。 本格ミステリーともまた少し違う、使命感に突き動かされるサスペンスを、是非チェックしてみて下さい。
ある少女
ある女性医師を主人公として、物語は進みます。しかし、ある女性医師を私達自身のメタファーに捉えることはできないでしょうか。 助けを求められたのに、何故少女のことを助けることができなかったのだろうか? それは、昨今の助けを求めるシリア難民に当てはめることもできると思います。また、明日食べる物にも不足する貧困層に当てはめることもできると思います。何故私は、私達は、彼らを助けることができないのだろうか?突き詰めて考えることをしないのだろうか? 助けを求める他者に対して不寛容になっている世界の中で、ダルデンヌ兄弟らしい『正義』をみました。
医者の視点から描いた移民問題。
医者の主人公は、診療時間がとっくに過ぎたころに訪ねてきた少女を無視した。翌日、少女は遺体で発見。なぜ、少女は亡くなったのか、なぜ訪ねてきたのか、少女は一体誰なのか。 物語が進むにつれて、今まで無関係だった人達も、少女の死亡に関係していることが分かる。人を救うことが仕事の医者が、救うことができた命を救えなかったことをきっかけに、物語は進んでいく。 移民問題がテーマらしく、所々で移民問題の深刻さが実感できる。 BGMが少なくて、エンディングもBGMはなし。珍しかった。BGMがないことによって、重たい雰囲気でストーリーは進んでいく。 これから移民問題はどのようにして解決していくべきなのか、問われている気がした。深い内容。
ダルデンヌ兄弟らしいラストカット
社会的な問題を映画で取り扱うことが多い彼らは、ともすれば、社会派監督ケン・ローチと比べられることも多い。
特に、前作の『サンドラの週末』はケン・ローチ風なので、そんな風にみられても仕方がないのかもしれない。
が、本質はまるで異なる。
それは、この映画で如実に示されていると思う。
ベルギー(だと思う)の中規模都市の診療所。
目の前をハイウェイが走り、その向こうは海。
若き女医ジェニー(アデル・エネル)は、そこのお医者さん。
以前の老医師が病気で入院し、辞めざるを得なくなったので、そこを引き継いでやっている。
しかし、まもなく大病院に迎えられる予定。
この小さな診療所も閉めざるを得ない。
そんなある夜、診療終了から1時間経た午後8時ごろ、診療所のブザーを鳴らしたものがいた。
そのブザーを1度きりで止んだため、大したことがないと判断した。
しかし、翌日、診療所に刑事が訪れる。
目の前の海岸で女性死体が見つかり、周辺の聞き込みをしている、入り口の防犯カメラの映像を確認させてほしい、と。
カメラの映像を確認すると、果たして、死体となった女性であった。
ジェニーは「あのとき、ドアを開けていれば・・・」と自責の念に駆られる・・・
というところから始まる物語で、ジェニーが自分なりの決着をつけるまでのハナシだ。
ジェニー自前の決着、それは・・・
死体で見つかった女性はIDもなく、身元不明、そのため無縁墓地に埋葬されている。
彼女が誰なのか、少なくとも名前ぐらいは知り、家族がいるなら引き渡したい、そういう思いである。
そうして、件のカメラ映像をスマホに入れて、知っている者はいないかと診療時間外に尋ね歩いていく。
映画の主題は、事件の顛末では(当然にして)ない。
あのときの「・・・たら、・・・れば」の思いを解消する「過程」そのもの。
興味深いのは、ただただ死んだ女性が誰なのかを尋ね歩くだけでなく、行動するジェニーのスマホにひっきりなしに患者からの電話が入ってくること。
事件に関係がある(ありそうな)内容もあるが、まるっきりの患者からの懇願もある。
そして、ひとつひとつにジェニーは対応していく。
「・・・たら、・・・れば」の思いを、二度としたくない。
これが繰り返し繰り返し描かれることで、結末が活きてきている。
事件の顛末は、いわゆる衝撃の結末からは程遠い。
しかし、名もなかった女性の名前がわかり、家族がわかり、家族との生活を知ることで、ジェニーの胸のつかえは少し下りる。
(名もない女性「LA FILLE INCONNUE」というのが原題)
ラストのカットは、映画監督ダルデンヌ兄弟流の映画的表現だ。
診療所を続けていくことにしたジェニーが、患者の老婦人の迎え入れる。
入口のブザー音。
診療所のドアを開けるジェニー。
ドアからなだれ込んでくるハイウェイの騒音。外界の生活、普通の人々の暮らし、それを表す騒音だ。
杖をついた老婦人の傍らで彼女を支え、階下の診療室へと降りていく・・・
何気ないカットなのだが、映画巻頭のジェニーからあきらかに変わったとわかるカット。
社会的な問題を背景にして、ひとが変わる瞬間を描き続けてきたダルデンヌ兄弟らしいエンディングだった。
たんたんとじっくりと。
丁寧に丁寧に重ねってたお話になってた。 こんな事があれば良心の呵責に悩まされるのは誰もがなるが彼女は責任に耐えかねて原因探しへ。 すごく感動するわけではないけど見終わると、ふーん…と感じてしまう一作。 しっかり納得できる終わり方で良かった。
彼女は行動する
人々は彼女に内面を吐露する。言葉だ。彼女は語らずに行動する。老医師から診療所を引き継ぎ、気持ちが折れた研修医を励まし、そして死んだ少女の後を追う。 ダルデンヌ兄弟作品の主人公たちはつねに行動する。
暗いミステリーだが傑作
久しく観なかった、本格的なミステリーである。これがアメリカ映画だったら万能のスーパーヒーローが派手なドンパチを繰り広げるところだが、フランス映画にはそんなリアリティのない人物は登場しない。 主人公の設定は非常にニュートラルだ。人生に特にこだわりはないが、医者としての責任感とモラルは人一倍である。診療所の受付は午後7時までで、1時間以上過ぎた8時5分にそのドアベルが鳴る。出ようとした研修医を思わず止めてしまった主人公を、翌日警察が訪問する。 物語はそこから急流のように進んでいく。医師として真面目に職務に取り組むからこそ、尚更少女の死に責任を感じる。そして行動をはじめる。思考し、勘を研ぎ澄まし、気になることをひとつずつ確実に当たっていく。主人公は知らず知らずに事件の真相に迫っていくが、日常は変わらない。多くの患者の主治医として昼夜を分かたず繁忙な生活をしながら、少女の死に真摯に向き合いつづける。 フランス語の「Au revoir」(さよなら、失礼します、じゃあね、またね、元気でね、etc・・・)がこれほど多用される映画はそうたくさんはないだろう。様々な「Au revoir」に、登場人物それぞれの思いが籠められる。主人公が別れ際に言う「Au revoir」は、相手と状況によってまったく違ったニュアンスになっていて、演じたアデル・エネルはひとつひとつを見事に使い分けている。 医師としては、研修医に唯一注意した、自分の感情をコントロールしなければならないという教訓を、自ら実践しているように見える。これほど自制心のある女性はそうはいないだろう。芯の強さに裏打ちされる自制心だ。その強さがどこから来るのかは映画ではわからない。描きようがないから描かないのだ。 おそらくこの映画は、描くべきシーンだけを描いているのだろう。日本酒の大吟醸のように、素材を削りに削っていて、無駄なシーンはひとつもない。ひとつでも見逃がしたら、観客は真実に辿り着けなくなる。暗いミステリーだが、まさにミステリーのお手本のような作品で、ディテールのすべてが真相に繋がっている。監督と主演女優の渾身の仕事がうかがわれる傑作である。 少女の姉の台詞で「妹は未成年」と訳していたが、「未成年」では13歳位から19歳まで、観客が受け取るイメージの幅があり過ぎる。姉はフランス語で「Dix-huit ans」と発音していたので、「妹は18歳」と訳したほうがよかったかもしれない。
ある意味ハードボイルド
診療所は、8時まで10分過ぎては、もちろん開けなくてもいい。しかし人生は、たらればの世界 。女医さんは、そこに悩む。最初は、退屈な展開でしたが、謎が少しづつ溶けていくうちに、画面にしっかり集中します。ほんと淡々とストーリーは、進んでいきます。
彼女の真の姿に感動した。
医者である彼女の印象が前半部分と後半部分が大きく変化した。最初は上から物を言う何か腹のたつ医者に感じた。
ある失態を境に、彼女の医者として人間として真の姿が徐々に浮き上がってくる。その流れは素晴らしい速さで描かれている。
しかし、被害者を黒人に設定した点が、どうしても解せない。
忙しそうなので、助手でも雇えば良いのに。
しばらくインターホンの音は、ご勘弁。
退屈なストーリーに眠気が
映画を見る前のあらすじ通りの展開で特に変化もなく、淡々と進んでいく
この手の映画はフランス映画の特徴のよう
どうして警察に相談しないかとか、そんな疑問が最初に浮かぶが主人公が探偵のように行動した結果、ある結末を得る
一直線のストーリー展開なので見る人によっては退屈で、最後の結末も容易に想像できるので、それ以外の要素に意味を求める映画といえるかも。
他人事
時間外に押された呼鈴に応じなかったことが死に繋がったことはわかるが、供養料を払ったり警察に頼らず自分で身元を調べたりと根本的なところで引っ掛かってしまった。 結局、関係者が自らペラペラ喋りだすし、背景を考えたらそこまでして出頭しない選択肢も良くわからない。 警察から何もなくいきなりの姉ちゃん登場も訳わからんし残念。
静かに重く
「ザ・フランス映画」というのが僕が一番最初に感じた印象だ。全編通してとにかくシュール。アクションやラブシーンがあるわけでもなく物語はゆっくりと進んでいく。全編通して重々しい雰囲気が漂い、見終わった後の衝撃といったらない。 舞台は田舎っぽい雰囲気がプンプンの街で登場人物達も田舎くさい。それもまた映画の重々しい雰囲気を強調していた。 主人公の女性がなんとしてでも突き止めたかった被害者の身元。彼女が執着する理由というのは、決して罪悪感だけではなく、自分の未来を切り開くためのものだと感じた。1人の女性の死から自分の人生の選択を大きく変える主人公の姿には勇気を貰った。 エンディングで音楽が流れない映画は久々だったw
小さな診療所に勤める医師ジェニーと助手のブライアンが残業中に入口の...
小さな診療所に勤める医師ジェニーと助手のブライアンが残業中に入口の呼出ベルが鳴った。診察時間を過ぎていた為応答しなかったが翌朝近所の工事現場で身元不明の女性の遺体が発見され、その女性が前日の夜に診療所の呼出ベルを鳴らしていたことが防犯カメラの映像から判明する。あの時応答していれば女性を助けられたかも知れないと自戒の念に囚われるジェニーはその女性の身元を調べ始めるが、そこには予期せぬ闇が横たわっていた。
サスペンスというよりも、自分なりに真摯に医療と向き合ってきたジェニーが、救えたかも知れない命を追いながらも自分の患者達に寄り添う姿を淡々と描く静かなドラマ。主人公を演じるアデル・エネルの透き通った瞳が印象的な美しい小品でした。
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