「Would you rather be a fish?」パターソン いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
Would you rather be a fish?
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かなり難しい作品。『ポエム』という日本ではあまり馴染みのない世界での、ある若い夫婦の1週間を描いたものだが、その何気ない日常の中にもちょっとした事件が起こる度、詩の題材やテーマ、それを端に発する夫婦の会話や優しさが映像に滲み出てくる流れである。BGMが少々オーバー目な雰囲気をだしているので、サスペンス的要素が現われるのではと思うのだが、別にそれ程酷い状況にはならない。勿論、主人公にとっては大事件なのだろうが・・・
鑑賞していて思うのは、ニューヨークの上に位置するロケーションの良さをベースに、風光明媚な滝、アメリカの古い町並み、適度に都会で適度に田舎的な雰囲気が、この作品にかかせない大事なところだということ。なんせ、主人公の役名がそのまま町の名前なのだから。そして、一種幻想的に誘う、双子の大量出現。ネットで調べてみてもこの町の双子の出生率についての記述が見当たらないので、単に演出上の効果なのだろうが、でも充分その登場が作品のスパイスを利かせている。ちょっと変わってはいるけど、決して踏み外さない程度の逸脱さ。ダイバーシティというのを綺麗に扱った作品としてもなかなかの傑作だ。
考えてみれば、この手のジャンル、日本の方が得意なんじゃないかなと思うのだが。そういう心の機微を丁寧に慈しむ映画である。
一言で言えば、『いっぷくの清涼剤』
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