劇場公開日 2017年6月3日

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「監督の、お母様への賛歌。ご自身の道程の確認。」20センチュリー・ウーマン とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0監督の、お母様への賛歌。ご自身の道程の確認。

2022年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

単純

知的

寝られる

20世紀世相のドキュメンタリーのような映画。
それをセンスのいい調度類・映像と、役者の表情でたっぷり見せてくれる。

 この頃のUSAでは、精神分析にしろ、エンカウンターにしろ、一大ムーブメントがあり、それを受けることが知識人であり、解放を目指す人であるという風潮もあった。ウーマンリブにフェミニズム、ヒッピー。こんな生き方にかぶれた人々居たなあ。
 あるべき自分ではなく、ありたい自分への追求。”本当”の自分探し。

 インテリア・ファッションなんかも真似したくなってしまう。
 色使い・光・質感・湿度感…。
 様々な小物がさりげなく、生活感あふれる、その人物の人となりがイメージできるように置かれている部屋。整えすぎることなく、でもインテリアのカタログを見ているようだ。人間が住んでいる空間。とても気持ちいい。癒される。
 ファッションもいい。パンクなんだけど知性を感じさせる。

 ベニングさん演じる母の、”対等”を目指しながらも(導こうとする時点で対等ではなくなるんだけれどね)、微妙な戸惑いや感情を知性で押し隠して”人生の先輩””親”としての貫禄を出そうとしているその様が痛々しくも愛おしい。”旧世代(19世紀)ではなく、進歩的な一人の人間としての母でありたい、子育てを間違えてはいけない(幸せにせねばならない)。”と足掻く姿が、自分を鏡に映すようで、共感するやら痛いやら。
 ファニングさんもガーウィグさんも素晴らしい。とってもリアル。
 ルーカス・ジェイド・ズマン君。これらの個性的な役者に囲まれて、でも独特の存在感を出している。この子の透明感が、アクの強い周りの人々をうまくつないでいるし、中和している。

とはいうものの、
 人物の内面を吐露しているようなセリフ・場面はありつつも、人物を深く掘りさげているわけでもないし、スピード感あふれる展開もない。
 ドラマや、エンターテイメントを期待していくと…。
 静かに映画に浸りたい方々向けだと思う。

夏の思い出を綴った日記のような。

とみいじょん