「天才芸術家のことが理解出来ないゾラ、世間、そして自分」セザンヌと過ごした時間 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
天才芸術家のことが理解出来ないゾラ、世間、そして自分
ダニエル・トンプソン監督による2016年製作のフランス映画
原題:Cezanne et moi 「セザンヌと私」、配給:セテラ・インターナショナル。
最初のタイトルバックの映像がとても美しく芸術的で、大いなる期待を抱かせたのだが、
・・・。
天才は理解されにくいというが、実際に幼馴染ゾラの友情を踏みにじるばかりの嫌な奴。ゾラはセザンヌのことを天才と評価するが、何をもってそう断言しているのか分からず、共感を覚えなかった。
落選ばかりと映画の中でも語られていたが、セザンヌの初期の作品を調べてみると、暗い画調で独自性も無く魅力を感じなかった。それが、映画でも目標とするところと語られていたが、最後に紹介される作品群で示されていた様に、空気の動きを感じさせる画期的な画調に進化していく。
何がこの進化を生み出したのか?それを映画で明らかとされることが私の期待するところであるが、妻を邪険に扱う等、狂気的なところだけが見せられてかなり不満を覚えた。
まあ、この映画は天才を理解できず、自分の才能の平凡さに絶望し、自覚的には売文行為に邁進するゾラ自身を主題とする映画かもしれない。フレイア・メーバー演ずる美しい家政婦ジャンヌ(実際綺麗だった)に、年甲斐もなく恋心を抱き悶え苦しむゾラ。最後、天才なのにセザンヌの才能は開花しなかったと結論付けるが、画商の活躍で遅咲きながら評価され始めているセザンヌ。結局、芸術家としては敵わなかったゾラの姿が印象つけられる。
最後、サント・ヴィクトワール山の実映像に、セザンヌのこの山を描いた数々の傑作を重ねる映像は、天才性を示していて素晴らしかった。
製作アルベール・コスキ、脚本ダニエル・トンプソン、撮影ジャン=マリー・ドルージュ、
美術ミシェル・アベ=バニエ、衣装カトリーヌ・ルテリエ、編集シルビ・ランドラ、音楽
エリック・ヌブー。
ギョーム・ガリエンヌ(ポール・セザンヌ)、ギョーム・カネ(エミール・ゾラ)、アリス・ポル(アレクサンドリーヌ・ゾラ)、アリス・ポルデボラ・フランソワ(オルタンス・セザンヌ)、フレイア・メーバー(ジャンヌ)、サビーヌ・アゼマ(アンヌ=エリザベート・セザンヌ)、イザベル・カンディエ(エミリー・ゾラ)。