わたしは、ダニエル・ブレイクのレビュー・感想・評価
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原題が突きつけられる瞬間、息が止まりそうになる
本作は人間の尊厳とは何かを、時に静かに、時に力強く問いかける。ロンドンから遠く離れたニューカッスルで、病を患い、失業手当の煩雑な手続きに悩まされる主人公ダニエル。彼は人道を外れることもなく、何十年と真面目に働き続け、税金だってきちんと払い続けてきた男だ。天に顔向けできないことなど何もないと、自信を持って生きている。しかし国が定めた制度や行政のあり方は、そういったまっとうな人間を否定するような理由をあれこれ並べ立て、人を選別し、弾き飛ばすことを平気でやってのける。その様子をケン・ローチは落ち着いたトーンで描き続けるが、しかし根底には怒りが沸々とみなぎっているのがわかる。かつて人はもっと繋がり合い、助け合い、慈愛を持って接し合う生き物ではなかったのか。「I, Daniel Blake」という原題が現れる瞬間、息が止まりそうになった。人間の尊厳をこれほど力強く突きつける場面が他にあるだろうか。
こう言った運動が移民排斥運動につながる
『あるある』の話で、行政機関だけでなく、民間会社でも、こう言ったトラブルは沢山経験していると思う。
電話での保留音楽が『ヴィヴァルディの四季 春の第1楽章』聞き覚えがある。共感をしてしまう。
さて、こんな状況に直ぐに『切れる』老人が僕の世代以上に多い。
『順番を守れ』って騒ぐ老人をよく目にすると思う。
最近、世界を回るようになって、色々な国の老人に出会うが『騒ぐ老人』は日本だけの様だ。
この映画の老人が住むアメリカ(イギリス?!)だけでない。日本でも失業手当を受け取るには、手続きが必要。勿論、窓口はさしあたっては他人事で話は進むが、冷静に判断して、きちんとした手段を取れば、以前の様な(窓口を盥回しにあう)手間はかからない。はずだ。
『揺り籠から墓場まで』と言っていたイギリスとは驚きだが、そう言った国であるから尚更、こう言ったトラブルには、対処していると想像する。アメリカはそもそも、未就業の保健制度すら無い。
この老人の気持ちには、共感出来る部分はあるが、こう言った運動が移民排斥運動につながる事実も忘れてはならない。また、貧困者はこんな稚拙な生き物では無い。そこを理解してこう言う映画は作るべきだと思う。
最期にこの老人へ
日本にいれば10万円の貰えたのにね。そして、
売春組織に引っ掛る女性へ
もっと高い物を万引きしていれば、まともな仕事を紹介されていたかもね。ブラックジョークだよ♥
グローバリズムが行く着く先
自分は、この「わたしは、ダニエル・ブレイク」のような役所のシステム、弱者切り捨ての政策、貧富の差は、グローバリズムがもたらす物と思っている。国や地方自治体が、国民の生活を守るために行っていた国営事業を民営化し、大手の資本が入ってくると、当然、効率化、人件費切捨てへ舵を切り、対人のサービスではなく、十把一絡げのサービスにならざるを得ない。米国や英国は、グローバリズムの先鋒で最たる国。
グローバリズムが進めば進むほど、移民の増加、失業者の増加、効率化、マニュアル化が進み、労働者も入れ替え可能となって、非人間的な管理社会になっていく。
それでも、ダニエルは、オンライン申請と格闘し、シングルマザーのケイティと二人の子どものため力を尽くし、お互いに支えあって生きようとした。そんな人たちが、今、増えているのだろう。
誰でも、歳をとって就職ができなくなって収入がなくなれば同じような問題を抱える。核家族化、単身家族化、一人暮らしが多くなってきた日本でも同様、身につまされる。
ストーリー 6 芸術 5 演技 5.5 エンタ 6 総合 6 最後...
ストーリー 6
芸術 5
演技 5.5
エンタ 6
総合 6
最後、心臓発作で死ぬ、が衝撃的。医者でもない人が医者の診立てを否定して結果医者が正しかった。ダニエルさんのジブンゴト度が半端ない。
イギリス版「水際作戦」の実態
規格内の人が知らないだけで、日本の社会保償制度もイギリスと同じ事が起きている。
日本の役所の対応の悪さを称した「水際作戦」なる語句が既に存在し、役所の窓口が派遣社員ら非正規に切り替えているのはニュースで取り上げられている。
ハロワ職員は既に10年前から非正規に切り替えられた。
対岸の火事は「親切な隣人どうしの共助」「本人の自助努力」では解決できない事をダニエルの自助で物語っている。
なかなか難問
ダニエル・ブレイク氏の尊厳を考えるなら、福祉の不備が悪いと言える。立場を逆転させたら、役所の職員に「失業保険を受給したいが働けない」と言う人間に、お金出していいものか? ただ、線引きがはっきりし過ぎると、漏れていく人が多く出てしまう。国の財政が余裕あれば、給付も規制しないだろうが、そうじゃなければ、切り捨てだよなぁ。
だけど、倒れそうになるまで食べずに我慢するケイティ、家財を売り払い、スカスカの部屋で毛布をかぶるダニエル、これは今すぐ援助しなくちゃダメでしょう。ダニエルはたぶん医療費が払えないから、薬を飲んでなかったんだろうな。担当医から指示するとか、何か手段は講じられないのか。
貧困は連鎖するとも言われるので、デイジーとディランの将来が心配である。デイジーといえば気になる点が…。あのたっぷりとしたドレッドヘアは、誰にやってもらったのかな? 美容院だったら、かなりいいお値段すると思う。一体、編んでどれくらいもつものなの…?
日テレ映画天国の録画を一年経って見たら、CMが「今日から俺は」だった。なんか、タイムカプセルみたいだー。
政府官僚への怒りの表明
都会の扶助制度から追われたシングルマザー家庭と長年の疲れで身体を壊したベテラン労働者。明日に持ち越す金はなくても真面目に暮らしてきたし、これからもそうするつもりだ。でも仕事がない。健康を取り戻すまでは休むように言われている。
公的扶助制度はそうした人々が利用していい制度。なのに役所は外部に業務を委託、人々を機械的に処理しようとし、一人一人に向き合ってはくれない。貧しい者どうしでは助け合うのにも限界がある。そして誰にだって、自分も他の人と同じ人間だという尊厳がある。
英国労働者の良心をベースに、社会問題を丁寧に告発していく脚本が良いと思った。
ラストは辛くて泣いてしまった。
こうした映画作品が注目されることで、行政が効率化の追求をやめ、経済的強者達がそのやり方を再考するようになればいいな…。
ケン・ローチ監督の思い
日々窓口で、訪れる人々の相談に応じている職員の方々は、個人的感情を抑えて対応する必要が有り、大変な事も多いだろうと思います。
その一方で、本当に必要とする人に救済の手を差し伸べる国であり、行政であって欲しいと改めて感じる作品でした。
新しく仕事を始めたケイティの仕事先に、ダニエルが訪れた場面で涙が溢れました。
ラストの展開は、ケン・ローチ監督の「今可能な最善の対応を!」( 場合によっては手遅れになってしまう )とのメッセージなのかも知れません。
ダニエルとケイティに対する周囲の人々のちょっとした優しさに救われる場面も。
日テレを録画にて鑑賞
私は、と力強く言える姿
心臓病患者として、手当てをもらいたいだけなのに、なぜここまでの労苦が必要で、人を人としてみなされないのか。
きっと、自国でも同じような事態は起こっているのだろうと感じまたしたし、今まさに、日本でも現金支給のための役所的な手続きをしなければならないといった話が進んでいることに、懸念を覚えます。
その中でも、ダニエルブレイクが、粘り強く、しぶとく、諦めずに、時に周囲の協力も得ながら、煩雑な手続きを進めていく姿は勇ましくありましたし、
ラストシーンで、悔しくも弔辞になってしまっ「私は、ダニエル・ブレイク」と、自分のことを卑下もせず、過剰な自信も持たず、誇り高く述べている姿に凛々しさを感じました。
「”おかしい”ことは、”おかしい”」と言える彼の強さに心が温まり、私もこのような人間になりたいと思う。とても心に突き刺さる1本です。
隣人には手を差し伸べたい
ドクターストップで就労可能と認定されるってのが納得できなかった。大工じゃなければ、可能ってことなのか。
何でもかんでもネットで申請する、分からない人には助けないっていう社会は嫌いだなと感じた。役所側からしたら仕事を回すためには仕方ないのかもしれないけど、それって本当の目的からはズレてしまってるんじゃないだろうか。今の自分はそこまで感じてないけど、立場が変われば、また違う世界に見えるのかな、と感じた。色々経験しないとな。
もう少し歳をとってから観るとまた感じ方ちがうんだろうな。
ダニエルさんとケイティさんが心から支え合っている姿に、救われた。近くにそんな通じ合える人がいれば、それだけでも幸せなんじゃないかな、「わたしは、ダニエル・ブレイク」って認識できるよね。
万引きする、とか、落書きする、とかそのエネルギーがあれば、もっと違うことに早くにベクトルを向ければ、良いのに、とドライな自分もいたけど、実際は難しいんだろうな〜。前向きに動き始めた時に発作が起きるってのは溜まったもんじゃない。
人の心の救いになれる人になりたい、隣人には手を差し伸べたい、よくブレるけどやっぱり継続したいなって強く感じた。あと、イギリス行きたい。
これはひどい
まずアマゾンプライムの紹介文がひどい。
隣の誰かを助けるだけで人生は変わる、なんてこのエンディングからよく思い付いたな。
主人公が何も成し遂げないで突然死亡。
あの二人の子供達はどうなったの?
どの辺で一体誰の人生が変わったの?
リアルを描いたのはいいが、これって映画としてどうなのよという気持ちが止まらない。
この映画が高評価なのも全く理解できない。
ほっこりしたくてこの映画を見ようと思う方には見ない方が良いと言いたい。
観て良かった
※ネタバレありです
ふとプライムでオススメされて予告の時点で引き付けられたので鑑賞しました。
観て良かったです。
私はハッピーエンドの物語が好きですが、最後お手洗いにダニエルが立った時、そこで心臓発作起こして亡くなるパターンだったら辛いな、と思ったらその通りで悔しくて涙が止まりませんでした。
ケティがお腹が空きすぎてトマト缶をその場で開けてしまうシーンでも胸が締め付けられました。
何故貧しいのに子供を産むんだろうとか昔なら思っていたけど、自分が子供を産み、更に自分が産まれた時のきっかけを母から聞くなどして、妊娠出産なんてひょんなことも多く世の中予定調和で生まれてきた子の方が少ないだろうと思うようになりました。
産んでから子供に申し訳ないと思って必死になるもんですよね。(全ての人がそうな訳では勿論ない)
PCの操作に四苦八苦するダニエルを見てて今すぐ手伝いに行きたいと思いました。
ねえ、なんでそんなに不親切なの?
オンラインでしか受け付けないならそのためのスタッフと設備を用意するべきじゃないか。人手が足りない&管理のデータベース化のためのオンライン受付なんだろうけど、あまりに意地悪なシステムじゃないか。
履歴書講座だって書き終えた履歴書を添削する係がいてもいいじゃない。
まとまった感想が書けないです。
悔しくて虚しくて優しさもあって悲しくて寂しくて・・
万引きについても考えさせられます。万引き家族も見たけど、私は万引きはやはり犯罪だと思う。どんなに辛くても人の物を盗むのは許されない。店主が許して商品をあげた時、自分ならどうするだろうかと自問しました。
決して明るい映画では無いけれど何だろう、、心の財産になるような映画。
観た人とじっくり語り合いたい。
悲しい
あまりに静かで、いつかとんでもないことが起きるのでは?とドキドキしながら観ていた。
でも、なかなか?何も起きない。
ただただ、淡々と時間だけが過ぎていく。
何も解決しないまま。
理不尽なたらい回しにも、ため息をつくだけのダニエル。
なんとか幸せになって欲しかったな。
ケイティ親子にも。
その後幸せになっただろうか?
隣人には手を差し出す。
座右の銘にしようかな。
何と言えばいいか分からない後味
何の予備知識もなく観たら、とんでもない映画だった。
真面目に勤労し、納税し、妻の介護までしてきた1人の男が、心臓病で仕事出来なくなったことを就労不可と認めない、医学知識の浅い人間が安易に出した結論のみによって、社会からはじかれていく。
身体に無理をさせて仕事に就くべきだったのか。
どんな屈辱や理不尽にも耐え、何度も求職者申請を続けるべきだったのか。
初めだけ手を貸してくれるかもしれない友人知人から、信頼を担保にお金を借りれば良かったのか。
いや、そうではないだろと思いたい。
一つ目は死んでしまう。そんなの過去の奴隷と同じではないか。
二つ目、三つ目は、赤の他人の話や創造だと思って外から見るから言えることだと思う。
二つ目三つ目を推奨しているような、映画に批判的なレビューを読んだ。
とても恐ろしい考え方をする人間がいるんだと思った。
昨今増加している、匿名では正しいことだけを追求する理想論自己陶酔にしか、私には思えない。
本人に非がないのに、惨めさに耐え続けるのが市民なのか。
返すあてもないお金を借りて、周りから信頼を失い老いていくのがベストか?
残酷な外野の正義感などいらない。
真綿で首を絞めるような、リアルな不幸を見事に描いている傑作だと思う。
清貧と言う名のレクイエム
「万引き家族」の原点のような映画、カンヌで常連の是枝監督にも影響を与えたのであろう。舞台は英国だが普遍的な社会問題を真正面から描いている。しかしながら、本当に観て欲しい人たちには観てもらえない映画だと思うと閉塞感と無力感に苛まされる。ケイティの「彼は決して貧しくはなかった、お金では買えないものを多く持っていたから・・」の弔事は一抹の慰め、せめてもの救いを与えてくれた気がする。
落ち込んでいたら、浅はかにもフィリップマーローの「強くなければ生きられない、優しくなければ生きている価値が無い」(If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.)の名セリフが浮かんできた。
エグいほど現実
ちょっと前にまさに主人公のような境遇になったので、他人事ではなく感じ入り込んでしまった。あの公務員の感じまでそっくり。自尊心削られるんだよ。お金のために、何で自分をここまで貶めなきゃならないんだろう。あのときの情けない無力な、踏みつけられた自分を思い出す。
他人事では全くない!!
ダニエルの第一印象は声が高いというものでした。生活描写やお役所対応がリアルで引き込まれます。人々の善意で成り立っているのだから、仕事の話は取り合えず受けて欲しかったです。母子に入れ込み過ぎなんじゃないかと思われるギリギリのバランスだったと思います。日本の政治や企業も「今だけ、自分だけ、お金だけ」の風潮で、2018年12月30日にTPPが発効し、国民の暮らしは更なる地獄に叩き落とされますが、人々に善意があるかは日本ではあまり期待できない気がします。
わたしは、ダニエル・ブレイク
「人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。」
そんなコピーがついている。
なるほど、と思いながらも隣人の優しさと愛情だけでは、どうにもできないことがある。どうすれば良かったのかな?と思わずにはいられない。
とっても優しい映画なんだけど、ケンローチ監督の怒りがスクリーンの裏に見え隠れする。
本当に本当にやりきれない。
でも、これが現実。
タイトルが素晴らしい。
やりきれない話
世知辛いと言うかなんというか。
日本で起きていることは世界各国で起きているのだろう。
変わりゆく社会に順応できない人間は切り捨てられるのか。
綺麗事だが、そうならない社会を目指さなくてはいけないと考えさせる映画だった。
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