「冷たい制度と人間の尊厳」わたしは、ダニエル・ブレイク N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
冷たい制度と人間の尊厳
ユーロ圏といえば言わずと知れた「レ・ミゼラブル」がある。
ほうふつとさせるまさに今、現代の貧困と人間の尊厳の物語。
そんなイギリスの社会制度が日本とどこか似通っていることもあり、
主人公の抱く苛立ちや愚弄されているとしか思えない屈辱感が
とても良く伝わった。
むしろこれ、日本じゃないのかと思えるほどに。
その中で、だからこそ尊厳を失えやしない主人公は、
捨てさせ飼いならそうとする社会としばしば対立する。
勝てるはずもないならジワジワ窮地へ追い込まれてゆくことで、
「落ちぶれる」のではなく、
シンプルに「貧しい者」となってゆくことの恐怖と残酷さはホラー並みだった。
間違ったことは何ひとつしていないというのに、
むしろ正しいからこそ噛み合わないという不条理。
弱者だからこそ救済されるべきだというのに、
強くないから打たれ、説教される自己責任論。
人間味のかけた、誰もが一番恐れる「社会」の冷たさが淡々と描かれ続ける本作。
そのどれもが「あるある」だからこそ、
これらに憤れるほど本当に他人事とは思えない作品だった。
ロシア映画に「裁かれるは善人ばかり」という映画はあったが、
そちらもなんとなく思い出している。
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