「衛生兵・ドスの伝記映画。」ハクソー・リッジ Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
衛生兵・ドスの伝記映画。
2016(日本は半年遅れの2017)年公開のアメリカ映画。実話に基づく伝記映画。
『ブレイブハート』でアカデミー賞監督賞を受賞したメル・ギブソンがメガホンをとった。
主役は、デズモンド・T・ドスを演じたアンドリュー・ガーフィールド。
メル・ギブソンは、本作でもアカデミー賞監督賞にノミネートされたが、
受賞したのは『ラ・ラ・ランド』のデミアン・チャゼル。
その代わり、でもないが、録音賞、編集賞を受賞。
作品賞、主演男優賞はノミネート。
ちなみにこの年は、前述した『ラ・ラ・ランド』のほかにも、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』もあり激戦の年だった。
ハクソー・リッジ(弓鋸状の尾根)は、前田高地の米軍呼称だ。
いわゆる「前田高地の戦い」を米軍側から描いたものだが、戦争映画ではない。
というと、
戦闘シーンだらけだったじゃないか!
と怒られるかもしれない。
私の定義では、伝記映画、だ。
『パットン大戦車軍団』と同じカテゴリーといえる。
デズモンド・T・ドスは元帥でも、大統領でもない。
最終階級は伍長(下から3番目)にすぎない。
にもかかわらず、伝記映画が製作されたの理由は、
「良心的兵役拒否者」として初めてアメリカ軍人最高位の名誉勲章(メダル・オブ・オナー)を受章したからだ。
良心的兵役拒否、
という概念は日本にはないし、日本人にはわからない。
主に宗教的な理由が多いとされ、
兵役忌避や脱走の正当化に使われた事実もあり、
米国においても、ポジティブなイメージはない。
本作の前半は、そういう空気の中、
ドスに対する説得、圧力、嫌がらせが描かれる。
前半のヤマは、軍法会議の場面であろう。
父親が古い軍服に身を包み現れる。
ひとことで良心的兵役拒否、と言っても
デズモンド・T・ドスのケースは特異だろう。
正確に言うと、ドスは兵役を拒否していない。
むしろ、志願している。
「戦場に行きたい、でも銃は持たない(持てない)」
という主張だった。
ドスは衛生兵になり、グアム、レイテ、沖縄戦に参加した。
彼は、前田高地攻防戦において75名の負傷兵を救護し、自らも重傷を負って後送された。
本作の戦闘シーンは、「激戦」を表すシンボルにすぎない。
日本人は感情のない殺人マシンとして描かれる。
第24師団(熊本)と第62師団(京都)から抽出された8個大隊が守備していたこと、
米軍側は、米陸軍による陸上攻撃だけでなく、
海軍艦艇による艦砲射撃、航空機によるナパーム弾攻撃の支援を得ていたこと、
などはもうどうでもよく(本作は戦争映画ではないので問題ないのだが)、
残虐で間抜け、ミステリアスな異民族・日本であればよい、という感じ。
まあ、そういう扱いには慣れてますが。
愚痴はここらあたりにして、、、
タイトルは、『ドス』で良かったのでは?
という☆2.0